竹里館 王維(ちくりかん おうい)
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竹里館 王維
獨坐幽篁裏
彈琴復長嘯
深林人不知
明月來相照
竹里館 王維
独り坐す幽篁(ゆうこう)の裏(うち)
琴を弾じて復(また)長嘯(ちょうしょう)す
深林人知らず
明月来たりて相照らす
現代語訳
一人ひっそりとした竹林の中に座り、
琴を弾いたり声をのばして歌ったりする。
明月の光が降り注ぎ私を照らす。
解説
竹里館は王維が長安の東南、秦嶺山脈のふところにあった藍田(らんでん)県に所有していた広大な別荘「輞川別業(もうせんべつぎょう)」のうちの一つです。
その竹林の中で、一人シミジミと琴を弾いているわけです。優雅です。
王維(?-761)字は摩詰(まきつ)。李白の詩仙、杜甫の詩聖に対して、詩仏と称せられます。孟浩然、韋応物、柳宗元と並び、自然詩を得意とし、「王孟韋柳(おうもういりゅう)」などと言われます。
熱心な仏教徒として知られます(字の「摩詰」は釈迦の弟子、維摩詰(ゆいまきつ)にちなむ)。
721年の進士?大楽丞になるも安禄山の乱に加担したため降格されます。しかし、やがて返り咲き、最終的には尚書右丞にまでなりました(このため、「王右丞」とも呼ばれる)。
南画の祖でもあります。「画中に詩あり詩中に画あり」とは、北宋の蘇軾の評です。
【幽篁】 ひっそりした竹林。 【長嘯】 声をのばして歌う。
夏目漱石は小説『草枕』の中でこの「竹里館」を絶賛しています。
「只二十字のうちに優に別乾坤を建立している」と。
北原白秋には「王維の雪景」という詩があります。
「竹里館」のほか代表作は、「元二の安西に使するを送る」「鹿柴」「九月九日山東の兄弟を憶う」
ほかに山中の隠居生活を歌った詩は≫≫
王安石「鐘山即事(鍾山即時)」、李白「山中問答」、
李白「獨り敬亭山に坐す」、良寛「半夜」
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