半夜 良寛(はんや りょうかん)

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半夜 良寛
回首五十有餘年
人間是非一夢中
山房五月黄梅雨
半夜蕭蕭灑虚窗

半夜(はんや) 良寛(りょうかん)
首(こうべ)を回(めぐ)らせば五十有余年(ごじゅうようよねん)
人間(じんかん)の是非(ぜひ)は一夢(いちむ)の中(うち)
山房(さんぼう) 五月(ごがつ) 黄梅(こうばい)の雨(あめ)
半夜蕭蕭(はんやしょうしょう)として虚窓(きょそう)に灑(そそ)ぐ

現代語訳

生まれてこのかた五十年あまり。

振り返って考えてみると、
この世界は善も悪も夢のようなものだ。

山中の庵(五合庵)に五月雨がふりかかる。

夜中に、さびしげにふる雨を、
私はこのみすぼらしい窓から眺めている。

語句

■人間 じんかん。人生、世の中。「人間 到る処青山あり」参照。 ■山房 山中の庵。良寛がすんいでいた五合庵。 ■黄梅の雨 梅の実が黄色く熟する頃に降る雨。五月雨。 ■蕭蕭 さびしげなさま。 ■虚窓 みすぼらしい窓。

解説

梅雨の詩。良寛が越後国蒲原郡に庵を結んでいた50歳ころの作です。 しっとり落ち着いた、いい雰囲気です。

良寛(1758-1831)。江戸時代後期の曹洞宗の僧。
越後国出雲崎の生まれ。18歳の時出家。

良寛というと、まず子供好きというイメージがありますね。

「良寛」と聞いた瞬間に、子供たちと鞠をついている図が浮かぶ、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

良寛の子供好きについてはいくつか逸話があります。

ある時、良寛は子供たちと
かくれんぼをすることになりました。

最初は良寛が鬼で、子供たちを次々に見つけていった。
さあ、今度は良寛の番だよ。おっ、そうかということで…、

良寛は田んぼのワラの陰に隠れます。

しかしその隠れ方が、たいへんうまかったんですね。

子供たちは見つけられないです。
もう日が暮れて、カラスが鳴いてきた。

あれー良寛もう帰っちゃったかな。
きっとそうだよと。

子供たちは家に帰っていきました。

ところが良寛は一人、藁の陰で
隠れ続けました…

次の朝、近所の人が見つけて、

「あれっ、なにやってんですか、こんなところで??」
「しーーっ、静かに!子供たちに見つかっちゃうじゃないか」

…そんな逸話が残っています。

また、良寛は書が得意でしたので、オエライさんに
字を書いてくれと、頼まれることも多かったのです。

でも、そういうのは断りました。

ところが、子供たちが凧を持ってきて、なんか書いてようと
せがむと、よしよしまかせとけと。

「天上大風」とビシーとした字で
書いてやったということです。

まあ、こういう人はストレスもたまらず、
笑顔が多かったろうと思います。

実際に梅雨の時期に録音しました。背景でジーッと虫が鳴いてます。
なかなか雰囲気が出てると思うんですがどうでしょうか。

朗読:左大臣光永

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