春夜 蘇軾
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春夜 蘇軾
春宵一刻値千金
花有清香月有陰
歌管楼台声細細
鞦韆院落夜沈沈
春夜(しゅんや) 蘇軾(そしょく)
春宵一刻(しゅんしょういっこく)値千金(あたいせんきん)
花(はな)に清香(せいこう)有(あ)り月(つき)に陰(かげ)有(あ)り
歌管楼台(かかんろうだい)声細細(こえさいさい)
鞦韆院落(しゅうせんいんらく)夜沈沈(よるちんちん)
現代語訳
春の宵は一刻が千金に値すると思えるほど素晴らしい。
花は清らかな香りを漂わせ、月はおぼろに霞んでいる。
歌声や管楽器の音が響いていた楼台も今は静まり、
かすかな声がするのみだ。
中庭には婦人が乗って遊ぶぶらんこが揺れ、
夜は深々と更けていく。
語句
■花有清香 花は清らかな香りを漂わせている。 ■月有陰 「陰」は、かげり。かすんでいること。 ■歌管 歌声や管楽器の音。 ■声細細 かすかな声。 ■鞦韆 しゅうせん。夫人が乗って遊ぶぶらんこ。 ■院落 中庭。 ■夜沈沈 夜がしんしんと更けていくさま。
解説
「春宵一刻値千金」という言葉は、日本では歌舞伎の石川五右衛門の台詞で知られています。
「絶景かな、絶景かな。春の宵は値千両とは、小せえ、小せえ。この五右衛門の目からは、値万両、万々両」(『金門五山桐』「山門」の場)
京都の古刹・南禅寺山門を眺めて五右衛門が見栄を切るのです。五右衛門といえばこれです。
滝廉太郎の「花」でも「春宵一刻値千金」の文句が効果的に取り入れられています。
錦おりなす長堤に
くるればのぼるおぼろ月
げに一刻も千金の
ながめを何にたとふべき
春の夜を詠んだ詩ではこの「春夜」と王安石の「夜直」が双璧と言われます。蘇軾も王安石も政治家であり文筆家でありました。
王安石「夜直」
↑こちらで朗読しています。「春色人を悩まして眠り得ず 月は花影を移して欄干に上らしむ」の部分は特に有名です。
ほかに春の夜を歌った詩としては……
李白「春夜洛城に笛を聞く」、
陶淵明「擬古」
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