夜直 王安石(やちょく おうあんせき)
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夜直 王安石
金爐香尽漏声残
翦翦軽風陣陣寒
春色悩人眠不得
月移花影上欄干
夜直(やちょく) 王安石(おうあんせき)
金炉(きんろ)の香(こう)尽(つ)き漏声(ろうせい)残(つ)く
翦翦(せんせん)たる軽風(けいふう) 陣陣(じんじん)に寒(さむ)し
春色(しゅくしょく)人(ひと)を悩(なや)まして眠(ねむ)り得(え)ず
月(つき)は花影(かえい)を移(うつ)して欄干(らんかん)に上(のぼ)らしむ
現代語訳
金の香炉の香は燃え尽き、水時計の音も弱弱しくなってきた。
そよ風が吹いては止み吹いては止みして、肌寒い。
春が近いことを感じ悩ましくて眠れない。
さっきまで地面にあった花の影が、
月の位置が移ったため欄干に上ってきた。
語句
■金爐 (宿直室の)黄金製の香炉。 ■漏声 水時計。 ■残 つく。尽きる。すたれる。「残る」ではない。 ■翦翦 風がさっと吹いてくるかんじ。 ■陣陣 吹いては止み吹いては止み、絶え絶えに続くかんじ。 ■春色 春の気配。
解説
蘇軾の「春夜」とともに、春の夜の情緒を描いた詩の双璧とされます。
宮中の宿直(とのい)をしている状況です。
結句「月は花影を移して欄干に上らしむ」は特に有名です。
百人一首の「淡路島かよふ千鳥の鳴く声にいく夜寝覚めぬ須磨の関守」(源兼昌)の情緒に通じるものがあります。
後半の二行…特に味わい深いです。「春色人を悩まして眠り得ず」…これは、すごくわかる気がするんですよ。
冷たい中にも春っぽさが混じってきて、もうすぐ春かな、来週は梅が咲くかな、梅見の帰りは居酒屋で一杯ひっかけるか…などとワクワクしながらも、どこか不安もあり、布団の中で悶々とする、あの感じ。
王安石の漢詩では「鐘山即時」が欠かせません。山中の静けさを描き「一鳥啼かず山更に幽なり」の文句で知られます。
ほかに春の夜を歌った詩としては……
蘇軾「春夜」、
李白「春夜洛城に笛を聞く」、
陶淵明「擬古」
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