八月十五日夜 禁中に独り直し 月に対して元九を憶う 白居易

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銀台金闕夕沈沈
独宿相思在翰林
三五夜中新月色
二千里外故人心
渚宮東面煙波冷
浴殿西頭鐘漏深
猶恐清光不同見
江陵卑湿足秋陰

銀台 金闕 夕沈沈たり
独宿 相思うて 翰林に在り
三五夜中 新月の色
二千里外 故人の心
渚宮の東面には煙波冷かならん
浴殿の西頭には鐘漏深し
猶恐る 清光 同じくは見ざるを
江陵は卑湿にして 秋陰足る

現代語訳

白金作りの楼台も、黄金づくりの宮殿も、日が落ちて静まりかえっている。
私は独り翰林院に宿直して、君のことを想っている。

さっき出たばかりの十五夜の月の色を、
二千里の彼方にいる君も、しみじみ感じ入って眺めているだろうか。

君がいる江陵の渚宮の東面では川面に夜霧がたちこめて、さぞ冷ややかだろうね。

私が今いる宮中の浴殿の西側では時を告げる鐘の音や水時計のしたたる音がしみじみと響いているよ。

だがひょっとして、君はこの澄んだ月の光を、私と同じように見てはいないのか。
江陵は土地が低く湿気が多く、秋の空は曇っているというから…。

解説

江陵に左遷された友人、元シンのことを想ってる詩です。

この年白居易は39歳。翰林学士として出仕していました。夜の宿直の雰囲気が実に落ち着いた詩です。王安石「夜直」と並び、宿直中の情緒を詠んだ詩のケッサクです。

【元九】は元シンのこと。九は九人目の兄弟であることをあらわす「排行」。王維「元二の安西に使するを送る」の【元二】さんと同じ話ですね。

【禁中】 禁門の内部。天子のまします空間。宮中。
【独宿】 独りで宿直する。

【銀台】 白銀づくりの楼台。 【金闕】 黄金の宮殿。
【夕沈沈】 日が落ちて静まりかえっている様子。
蘇軾「春夜」に「鞦韆院落夜沈沈」と。

【相思】 相手を思う。
【翰林】 翰林院。玄宗の時代に設けられた役所。主に詔書の起草に当たった。

【三五夜中】 3×5=15で、十五夜、というリクツ。
【二千里外】 二千里の彼方にいる(君)
【故人】 友人。元シンをさす。

【渚宮】 江陵にある楚の宮殿。 【煙波】 川霧の立ち込める水面。
【浴殿】 翰林院のそばにあった浴堂殿。
【西頭】 西のあたり。
【鐘漏】 時を告げる鐘と、水時計のしたたり落ちる音。

【清光】 澄んだ月の光。
【江陵】 湖北省江陵県。荊州。

【卑湿】 土地が低く湿気が多い。 【秋陰】 秋空が曇っているかんじ。
【足】とても多い。溢れかえっている。

逆に左遷先で故郷にいる友人たちを想っている詩に、王昌齡「芙蓉楼にて辛斬を送る」があります。
朗読:左大臣

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