秋暁 南谷を行きて荒村を経たり 柳宗元

晩秋、朝早く、奥深い谷をさんぽしている時の風情をよんだ詩です。

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秋暁行南谷経荒村 柳宗元

杪秋霜露重
晨起行幽谷
黄葉覆渓橋
荒村唯古木
寒花疎寂歴
幽泉微断続
機心久已忘
何事驚麋鹿

秋暁(しゅうぎょう)南谷(なんこく)を行(い)きて荒村(こうそん)を経たり 柳宗元
杪秋(びょうしゅう)霜露(そうろ)重(しげ)し
晨(あした)に起(お)きて幽谷(ゆうこく)を行く
黄葉(こうよう)渓橋(けいきょう)を覆(おお)い
荒村(こうそん)唯(た)だ古木(こぼく)のみ
寒花(かんか)疎(まば)らに寂歴(せきれき)たり
幽泉(ゆうせん)微(かす)かに断続(だんぞく)す
機心(きしん)は久(ひさ)しく已(すで)に忘れたるに
何事(なにごと)ぞ麋鹿(びろく)を驚かしむるとは

現代語訳

秋も終わりの頃で、霜と露が多い
朝起きて、奥深い谷を歩く
黄色く染まった葉が、谷にかかった橋の上を覆い、
荒れた村にはただ古木があるのみだ
冬の花がまばらにひっそりと咲いている
静かな泉が、微かにとぎれとぎれに水音を立てている
獲物をとらえようなどという色気心は長く忘れているのに
何としたことか。鹿の群れを驚かせてしまうとは

語句

■南谷 南の谷。地名ではない。 ■杪秋 秋の末。 ■重 多い。 ■幽谷 奥深い谷。 ■渓橋 谷川にかかった橋。 ■寒花 冬の花。 ■寂歴 ひっそりと寂しい。 ■幽泉 静かにわく泉。 ■機心 騙そうという心。動物を捕獲しようといった色気。 ■麋鹿 大鹿と鹿。

解説

作者が永州(湖南省永州)に左遷され、悠々自適の生活をたのしんでいる時の詩。晩秋、朝早く、奥深い谷をさんぽしている時の風情。

第七句、八句は『列子』黄帝篇に見えるエピソードをふまえます。ある人が、海の近くにすんでいて、カモメを好んでいた。毎朝、海のほとりに行き、カモメを友として遊んでいた。カモメの数は100羽を降らなかった。その父が言った。「お前にカモメがなついているそうだな。獲ってこい。私もカモメと遊びたい」。翌朝、海のほとりに行ったら、カモメは空を旋回するばかりで下りてこなかった、と。

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