漁翁 柳宗元(ぎょおう りゅうそうげん)

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漁翁 柳宗元
魚翁夜傍西巖宿
曉汲清湘然楚竹
煙銷日出不見人
欸乃一聲山水綠
迴看天際下中流
巖上無心雲相逐

漁翁(ぎょおう) 柳宗元(りゅうそうげん)
魚翁(ぎょおう) 夜(よる) 西巌(せいがん)に傍(そ)うて宿(しゅく)し
曉(あかつき)に清湘(せいしょう)を汲(く)み楚竹(そちく)を然(た)く
煙(もや)銷(き)え 日(ひ)出(い)でて 人を見ず
欸乃(あいだい)一聲(いっせい) 山水(さんすい)緑(みどり)なり
天際(てんさい)を廻看(かいかん)して中流(ちゅうりゅう)を下(くだ)れば
巌上(がんじょう) 無心(むしん)に雲(くも) 相逐(あいお)う

現代語訳

漁師の爺さんは、夜は西の崖に寄り添って眠っている。
明け方になると清らかな湘江の水を汲み、竹を燃やす。

煙が消え、日が昇る。
人影は見えず、ただ漁師の掛け声が響くばかり。山も水も緑に色づいている。

天の際を振り仰ぎつつ川を下っていくと、
崖の上から雲が無心に私を追ってくる。

語句

■汲清湘 清らかな湘水の水を汲む。湘水は江西省チワン族自治区から湖南省を北上し瀟水に合流し洞庭湖に注ぐ川。 ■楚竹 楚は湖南省あたりの旧名。 ■煙 朝もや。 ■欸乃 舟をこぐ時のエイオウと言う掛け声。 ■廻看 振り返る。 ■無心雲相逐 陶淵明「帰去来辞」の「雲は心無くして以て岫《しゅう》を出《い》で鳥は飛ぶに倦《あ》きて還《かえ》るを知る」を引く。

解説

柳宗元(773-819)。字は子厚。河東の人。
王叔文の政治改革運動に参加するも王の失脚により
永州の司馬に左遷されます。

その後柳州の刺吏となり、その地で一生を終えました。

江雪」と並び、左遷先の永州での心象風景です。
漁師の爺さんの姿が仙人じみて印象に残ります。

朗読:左大臣光永

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