雨中登岳陽楼望君山 黄庭堅
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雨中登岳陽楼望君山 黄庭堅
投荒万死鬢毛斑
生出瞿塘灔澦関
未到江南先一笑
岳陽楼上対君山
雨中(うちゅう) 岳陽楼(がくようろう)に登(のぼ)って君山(くんざん)を望(のぞ)む 黄庭堅(こうていけん)
荒(こう)に投(とう)じて 万死(ばんし) 鬢毛(びんもう) 斑(まだ)らなり
生きて瞿塘灔澦関(くとうえんよかん)を出(い)づ
未(いま)だ江南(こうなん)に到(いた)らざるに先(ま)ず一笑(いっしょう)し
岳陽楼上(がくようろうじょう) 君山(くんざん)に対(たい)す
現代語訳
野蛮な地に追放されて何度も死ぬような目にあい、
鬢の毛には白いものが混じってきた。
だがなんとか、生きて三峡の難所・
瞿塘灔澦関を抜けることができた。
まだ江南には至らないが笑いがこみ上げてくる。
岳陽楼に上って、洞庭湖に浮かぶ君山に向かい合う。
語句
■洞庭湖 湖南省北東部の景勝。「岳陽楼」はそのほとりに立つ楼台。杜甫「登岳陽楼」、孟浩然「望洞庭湖贈張丞相」が、洞庭湖・岳陽楼を詠んだ詩の双璧とされる。 ■君山 洞庭湖の中にある小島。 ■投荒 辺鄙な地に流されること。流罪になること。黄庭堅が六年をすごした四川をさす。 ■万死 生きてはふたたび帰れないと死を覚悟した気持。 ■鬢毛斑 鬢の毛が白髪まじりになる。 ■生入 生きて帰ってくる。 ■瞿塘 長江の三峡の一つ瞿塘峡。四川省奉節(ほうせつ)東南。 ■灔澦関 瞿塘峡の水上に出た岩。古来、四川に出入りする関門だったため「関」という。解説
作者黄庭堅が四川に追放され、かの地で六年間をすごし、六年目に罪ゆるされて、故郷の江南地方へもどります。その途中、洞庭湖に面した岳陽樓から、湖にうかぶ島、君山をながめてああ生きてふたたび戻ってこれたのだなぁ…としみじみ感じ入っている詩です。
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朗読:左大臣光永