山西の村に遊ぶ 陸游(さいせいのむらにあそぶ りくゆう)

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遊山西村 陸游
莫笑農家臘酒渾
豊年留客足鶏豚
山重水複疑無路
柳暗花明又一村
簫鼓追随春社近
衣冠簡朴古風存
従今若許閑乗月
拄杖無時夜叩門

山西(さんせい)の村(むら)に遊(あそ)ぶ 陸游(りくゆう)
笑(わら)う莫(な)かれ 農家(のうか)の臘酒(ろうしゅ)渾(にご)れるを
豊年(ほうねん) 客(かく)を留(とど)めて 鶏豚(けいとん)足(た)る
山重(やまかさ)なり 水複(みずふく)して 路無(みちな)きかと疑(うたが)えば
柳暗(やなぎくら)く 花明(はなあか)るく 又一村(またいっそん)あり
簫鼓(しょうこ) 追随(ついずい)して 春社(しゅんしゃ)近(ちか)く
衣冠(いかん)簡朴(かんぼく)にして 古風(こふう)存(そん)す
今(いま)より若(も)し閑(かん)に月(つき)に乗(じょう)ずることを許(ゆる)さば
杖(つえ)を拄(つい)て時無(ときな)く 夜(よる) 門(もん)を叩(たた)かん

現代語訳

農家の作り置きの濁り酒だが、バカにしたものではない。
豊作の年だったので、鶏も豚もお客をもてなすのに十分な量がある。

山が重なり、川が折れ曲がって、もうお仕舞いかと思うと、
そこでまた道が開けた。

柳の陰は暗く、花は明るく、また一つの村が現れた。

太鼓の音が追ってくるのは、春の祭りが近いからだ。
村人のいでたちは簡素なもので、昔風を残している。

今後もし閑な時に月に誘われて訪ねてきてもいいとおっしゃるのなら、
杖をついて時間に関係なく、夜中にご訪問いたしますぞ。

解説

ノンビリと世捨て人精神に満ちた詩です。気持ちよく声が出ます。

陸游(1125-1209)。南宋最大の詩人。政治家。字は務観(むかん)。号は放翁(ほうおう)。越州山陰(えっしゅうさんいん)(浙江省紹興市)の人。范成大(はんせいだい)・楊万里(ようばんり)とならび南宋の三大詩人。

陸游の時代の南宋は北方女真族が建てた金に国土をおびやかされており、陸游自身も子供のころ戦乱で各地を転々とした経験があります。

そのため陸游は生涯、金に対する徹底抗戦をとき、憂国詩人とよばれます。

宰相秦檜(しんかい)の横槍で科挙に合格できず、出世の道を閉ざされます。

秦檜の死後、一時中央に呼ばれるも普段からの強硬な発言(対金抗戦論)があだとなり、すぐに地方に左遷されます。その後も強硬な発言がもとで何度も免職の危機にさらされました。

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朗読:左大臣光永

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