将進酒 李白(しょうしんしゅ りはく)

こんにちは。左大臣光永です。

主に西南戦争の取材のため、一ヶ月くらい実家の熊本に滞在していましたが、そろそろ京都にもどります。

毎日、温泉に入って、島崎や阿蘇の地酒を飲んで、楽しかったです。

4月18日に予定していた京都講演は、新型コロナウイルスの流行を考慮して延期します。開催時期は様子をみて5月-6月頃予定しています。
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将進酒 李白
君不見黄河之水天上來
奔流到海不復回
君不見高堂明鏡悲白髮
朝如青絲暮成雪
人生得意須盡歡
莫使金尊空對月
天生我材必有用
千金散盡還復來
烹羊宰牛且爲樂
會須一飮三百杯

将進酒 李白
君見ずや黄河の水 天上より來たるを
奔流海に到りて 復た回らず
君見ずや高堂の明鏡 白髮を悲しむを
朝には青絲の如きも 暮には雪と成る
人生意を得ば 須らく歡を盡くすべし
金尊をして空しく月に對せしむる莫れ
天 我が材を生ずる必ず用有り
千金散じ盡くせば還た復た來たらん
羊を烹(に)牛を 宰(ほふ)りて且らく 樂しみを爲さん
會(かなら)ず須(すべか)らく一飮三百杯なるべし

現代語訳

君よ見たまえ、黄河の水が天上から注ぐのを。
激しい流れが海に流れ込むと、二度と戻ってこないのだ。

君よ見たまえ、ご立派なお屋敷に住んではいるが、
鏡に我が身を映して
白髪を悲しんでいる老人の姿を

朝は黒い絹糸のようであった髪も
暮れには雪のように真っ白になるのだ。

人生、楽しめるうちに楽しみを尽くすべきである。
金の酒樽をみすみす月光にさらしてはならない。

天が私にこの才能を授けたのだ。必ず用いられる日が来る。
金なんぞは使い果たしてもすぐにまた入ってくる。

羊を煮て牛を料理して、まず楽しみ尽くそう。
どうせなら一飲みで三百杯というくらい、トコトン楽しむべきだ。

語句

■奔流 激しい流れ。 ■高堂 ご立派なお屋敷。 ■明鏡 澄んだ鏡。李白「秋浦の歌」張九齢「照鏡見白髪」参照。 ■青絲 黒い絹糸。「青」は黒も指す。 ■得意 自分の気持ちにあうこと。楽しめること。 ■須 すべからく~べし。ぜひ~すべきだ。李白「月下独酌」に「行樂須及春」と。 ■盡歡 楽しみ尽くす。楽しみまくる。 ■金尊 金の酒樽。 ■對月 対月。月に向かう。月光にさらす。 ■我材 私の才能。 ■必有用 必ず用いられる。 ■烹 煮る。 ■宰 ほふる。料理する。 ■且 しばらく。短い間。 ■會須 かならずすべからく~べし。きっと~すべきだ。


岑夫子丹丘生
將進酒杯莫停
與君歌一曲
請君爲我傾耳聽
鐘鼓饌玉不足貴
但願長醉不用醒
古來聖賢皆寂寞
惟有飮者留其名

岑夫子(しんふうし) 丹丘生(たんきうせい)
將に酒を進めんとす 杯停(とど)むること莫(なか)れ
君が與(ため)に一曲を歌はん
請ふ 君 我が爲に耳を傾けて聽け
鐘鼓 饌玉 貴ぶに足らず
但だ 長醉を願ひて醒むるを用いず
古來 聖賢 皆寂寞
惟(た)だ飮者のみ 其の名を留むる有り

現代語訳

岑先生、丹丘殿、さあ酒を飲んでくれ。
盃を押し止めてはいけません。

君のために一曲歌おう。
どうか君は私のために耳を傾けて聴いてくれ。

音楽や御馳走が何だというのだ。
長い間酔って覚めないことが一番いいのだ。

昔から聖者や賢人は幾人もいたが、死んでしまえばそれまでだ。
ただ酒呑みだけが、その名を留めている!

語句

■岑夫子 ■夫子は先生。岑先生。■丹丘生■生は敬称。丹丘殿。 ■將進酒 酒をお勧めする。 ■杯莫停 杯を断っちゃいけない。 ■請 お願いする。 ■傾耳 耳をそばだてる。耳を澄ます。 ■鐘鼓 鐘や太鼓⇒音楽。 ■饌玉 せんぎょく。ごちそう。 ■足貴 何の価値も無い。 ■長醉 長い間酔っ払っていること。 ■聖賢 聖人や賢人。 ■寂寞 さびしいこと。死んでしまったこと。 ■飮者 酒飲み。

 

陳王昔時宴平樂
斗酒十千恣歡謔
主人何爲言少錢
徑須沽取對君酌
五花馬千金裘
呼兒將出換美酒
與爾同銷萬古愁

陳王 昔時 平楽に宴し
斗酒十千 歓謔(かんぎゃく)を恣(ほしいまま)にす
主人 何すれぞ 銭少なしと言わん
ただちに須らく沽(か)ひ取って 君に対して酌(く)むべし
五花の馬 千金の裘(きゅう)
児を呼び将(ひ)き出だして 美酒に換え
なんじとともに銷(け)さん 万古の愁い

現代語訳

昔、魏の曹植は洛陽の西の平楽観で一斗一万銭の贅沢な酒をふるまい、
楽しみの限りを尽くしたという。

主人である私が、どうして金が無いなどとケチケチしていれましょう。
すぐに買ってきて飲んでいただきます。

毛並みの良い馬も、千金の皮衣も、
使いの童に持っていかせて美酒に換え、
一緒に消しましょう、この限り無い憂いを

語句

■陳王 魏の曹植。詩に長けていた。「七歩詩」 ■昔時 昔。  ■平楽 平楽観。宮殿の名。洛陽の西にあった。後漢の明帝の造営。■宴 酒盛りをする。 ■斗酒十千 ■斗酒は一斗の酒。 十千は一万。一斗の酒を一万銭で買う、すごい贅沢。 ■歓謔 かんぎゃく。よろこびたわむれる。 ■主人 ここでは李白。 何爲 なんすれぞ。どうして~しようか。 ■徑 ただちに。すぐに。 ■須 ぜひ~するべきだ。 ■沽取 買い取る。■五花馬 五色の花の紋のついた名馬。毛並みのいい名馬。 ■千金裘 千金もする高価な皮衣。 ■兒 使用人。 ■萬古愁 限りない愁い。

解説

江南に遊び道士呉筠(ごいん)と知り合った李白は、
742年、呉筠(ごいん)が朝廷に召し出されたのに伴って
長安にのぼります。

唐代のほかの詩人たちとは違い、李白は一度も科挙を受験していません。
しかし胸のうちでは自分の才能を信じ、必ず用いられるはずだと
信じていました。

「都へ登ってみないか?」

道士呉筠(ごいん)の誘いが李白の胸に熱いものをかきたてます。
時に742年。李白42歳。はじめて長安にのぼります。

この詩「将進酒」はいつ作られたか不明です。しかし、
長安へのぼる直前のあたりと考えるとしっくり来る気がします。

長年就職活動をしているのに任官の口が得られない。
しかし、自分にはできるはずだ。やれるはずだ。
自信と不安が入り混じった感じがよくあらわれています。

「天わが財を生ずる。必ず用あり」の名文句が光ります。

再発売
おくのほそ道 現代語訳つき朗読
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月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。
舟の上に生涯をうかべ、
馬の口とらえて老をむかふる物は、
日々旅にして旅を栖とす。

元禄ニ年、四十六歳の松尾芭蕉は
門人河合曾良と共に『奥の細道』の旅へ出発しました。

深川の庵を出発し奥羽、北陸を経て
美濃の大垣まで全行程約600里(2400キロメートル)、
日数約150日間にわたる壮大な旅です。

それは西行、能因といった「古人」の魂に触れる旅であり、
ロマン溢れる歌枕の地を訪ねる旅でした。

詳しくはリンク先まで
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本日も左大臣光永がお話しました。

朗読:左大臣