懷いを遣る 杜牧

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遣懐
落魄江湖載酒行
楚腰繊細掌中輕
十年一覺揚州夢
贏得靑樓薄倖名

懐いを遣る
江湖に落魄して酒を載せて行く
楚腰(そよう)繊細(せんさい) 掌中(しょうちゅう)に軽し
十年一たび覚む 揚州の夢
贏(か)ち得たり 青楼(せいろう)薄倖(はっこう)の名

現代語訳

江南で身を持ち崩して遊び暮らしていた頃、いつも船に酒を載せていた。

たおやかな腰つきの女も、手の平に載るような軽やかな女も、相手にしたものだ。

それから十年。ハッと目覚めてみると、揚州での日々はまるで夢のようだ。

残ったのは女郎屋通いの浮気男の評判ばかりだ。

語句
■遣懐 心の中にわだかまっている思いを吐き出すこと。 ■江湖 長江と洞庭湖をふくむ江南地方一帯。 ■落魄 身を持ち崩すこと。 ■楚腰 昔、楚の国王が腰の細い女を好んだので楚の国では腰の細い女が増えたという。 ■掌中軽 漢の成帝の愛妾であった趙飛燕は体が小さく、人の手の平の上で踊ることができたという。 ■揚州 揚州は江蘇省江都県。当時、南方一の歓楽街だった。杜牧のこの歌から「揚州夢」は、過ぎ去った歓楽の日々のこと。 ■青楼 ここでは女郎屋。 ■薄倖 薄情者。浮気男。

……

赴任先の揚州で、酒びたり女びたりな放蕩生活を送った、
その当時のことを思い出しているのです。

懐かしさ、ほろ苦さ、二度と戻らない若かりし日々。
いろいろな思いが渦巻いているかんじです。

杜牧「揚州の韓綽判官に寄す」
↑揚州時代の友人に、なじみの芸妓の消息を尋ねている詩。「二十四橋名月の夜」の句が光ります。

永井荷風「墨上春遊」
↑初句「江湖に落魄して酒を載せて行く」を、永井荷風が本歌取りしています。

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朗読:左大臣光永

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