飲湖上初晴後雨 蘇軾(こじょうにいんすはじめはれのちにあめふる そしょく)
飲湖上初晴後雨 蘇軾
水光瀲灔晴方好
山色空濛雨亦奇
欲把西湖比西子
淡粧濃抹總相宜湖上(こじょう)に飲(いん)す初(はじめ)晴(はれ)後(のち)に雨(あめ)ふる 蘇軾(そしょく)
水光瀲灔(すいこうれんえん)として晴(は)れて方(まさ)に好(よ)く、
山色空濛(さんしょくくうもう)として雨(あめ)もまた奇(き)なり。
西湖(せいこ)を把(もと)て西子(せいし)に比(ひ)せんと欲(ほっ)すれば、
淡粧濃抹(たんしょうのうまつ)総(す)べて相(あい)よろし。
現代語訳
水面がキラキラと輝き、さざなみが揺れている。
晴れた日の西湖は実に素晴らしい。
また霧雨で山の色が朦朧とにじんでいる、
雨の日の西湖も味わい深いものだ。
西湖の様子を伝説的な美女【西施】に比べようとすれば、
薄化粧も厚化粧も、どちらも似合っていて、素晴らしい。
語句
■水光 湖の水面が輝いているさま。 ■瀲灔 れんえん。さざ波が揺れているさま。 ■山色 山の色。■空濛 朦朧としたさま。 ■奇 めずらしい。独特の趣がある。■西施 春秋時代の伝説的な美女。胸を病んでいて眉をしかめると、そのさまがますます美しかったという。 ■欲 ~しようとする。 ■淡粧 薄化粧。 ■濃抹 厚化粧。 ■相宜 ふさわしい。適合している。
解説
湖上にぽつねんと舟を浮かべて酒を飲んでるのでしょうか。いい雰囲気です。西湖は杭州にある湖。沿岸に「西湖十景」という景勝地があります。「琵琶湖八景」みたいですね。
マルコポーロがその美しさを讃えたことでも有名です。
蘇軾(1036-1101)。宋代の政治家・詩人。「蘇東坡」と呼ばれます。「春宵一刻値千金」の言葉は蘇軾の詩「春夜」の出だしです。日本では歌舞伎の石川五右衛門の台詞「絶景かな絶景かな春の宵は値千金といえども…」」で知られていますね。
【西施】は中国春秋時代の伝説的な美女。越王勾践が呉王夫差を堕落させるために送ったといいます。
呉王夫差は西施の色気にすっかり骨抜きにされ、呉の国力は弱まりついに越に滅ぼされたということです。
松尾芭蕉は『奥の細道』松島の章で松島の景色を洞庭・西湖にならべて絶賛しています。
象潟の章ではこの「飲湖上初晴後雨」を引用しています。
『奥の細道』松島
『奥の細道』象潟
↑こちらで朗読しています。
夕方の雑司が谷霊園で録音しました。さすがに自動車の音が激しいですね。でも墓地は人通りが少なくて、声を出すにはいい環境です。
≫再録しました。今度は和室です。言葉の意味を最初はあまり理解してなかったので、よく調べた上で読みました。
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