貧交行 杜甫(ひんこうこう とほ)
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貧交行 杜甫
翻手作雲覆手雨
紛紛軽薄何須数
君不見管鮑貧時交
此道今人棄如土
貧交行 杜甫
手を翻せば雲となり 手を覆えば雨となる
紛紛たる軽薄 何ぞ数うるを須(もち)いん
君見ずや管鮑貧時の交わり
此の道 今人棄てて土の如し
現代語訳
手を上に向ければ雲となり、下に向ければ雨となる。
そのように、くるくる変わる人の態度である。
軽薄な連中が入り乱れている。数えるまでもなく多すぎる。
見たまえ、春秋時代の管仲と鮑叔牙とが貧しい時どんな交わりをしていたか。
今の人はもうあの感覚を土くれのように棄ててしまったのだ。
語句
■翻手 手を上に向ける。 ■覆手 手を下に向ける。 ■紛紛 入り乱れているさま。 ■須数 数える必要もないほど多い。 ■君見 読者に呼びかけている。楽府体の一般的な表現。 ■管鮑 春秋時代の斉の人管仲と鮑叔。二人はとても仲がよかった。
解説
天宝11年(752年)杜甫が41歳の作。科挙に落第し、任官の口を求めて諸方をかけまわっていた時の作です。
そんな状況だけに世の中に対する不満というか、イジケた、すねた感じが前面に出ています。
三句目が字余りなのも計算の上というより不満がホトバしった感じがします。
「管鮑の交わり」は春秋時代の名宰相管仲とその親友鮑叔との故事。管仲は若い頃すごくビンボウでした。鮑叔と共に商売をしましたが、管仲はいつも儲けの中から多く取っていました。
それでも鮑叔は管仲をとがめませんでした。
また管仲は何度も任官してクビになりましたが、それでも鮑叔は管仲をバカにしませんでした。
また管仲は三度戦争に行きましたが、いずれも逃げ帰ってきました。それでも鮑叔は管仲を臆病者と思いませんでした。管仲に老いた母がいることを知っていたからです。
その後、管仲は宰相になりましたが「私を生んだのは父母だが私のことを本当にわかってくれているのは鮑叔だ」と語り生涯固い友情を持ち続けました。
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