澄邁驛通潮閣 蘇軾

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澄邁驛通潮閣 蘇軾
餘生欲老海南村
帝遣巫陽招我魂
杳杳天低鶻沒處
青山一髮是中原

澄邁駅(ちょうまいえ)の通潮閣(つうちょうかく) 蘇軾(そしょく)
余生(よせい) 老(お)いんと欲(ほっ)す 海南(かいなん)の村(むら)
帝(てい) 巫陽(ふよう)をして 我(わ)が魂(たましい)を招(まね)かしむ
杳杳(ようよう)として天低(てんた)れ 鶻(こつ)の没(ぼっ)する処(ところ)
青山(せいざん) 一髪(いっぱつ) 是(こ)れ中原(ちゅうげん)

現代語訳

私はこの海南島の村で余生を送り、
そのまま没する覚悟だった。

しかし天帝は巫女をつかわして
私の魂を呼び戻された!

はるか彼方、天が垂れ込めて
ハヤブサの姿が見えなくなるあたり。

一本の髪の毛のように見えるあの青い大陸こそ、
私の帰るべき中原なのだ!

語句

■澄邁駅 海南島の北岸澄邁駅の宿駅。中国大陸と向かい合う。 ■通潮閣 澄邁駅にあった楼台。 ■帝遣巫陽招我魂 「帝」は天帝。実は徽宗。「巫陽」は巫女の名。『楚辞』にある、帝が屈原の魂がさまよっているのを憐れみ呼び戻した記事となぞらえ、皇帝から中国本土に呼び戻されたことをいう。 ■杳杳 はるかなさま。 ■鶻 はやぶさ。 ■青山一髪 一筋の髪の毛のように連なった山々。 ■中原 海南島からみた中国本土。

解説

蘇軾は晩年、政争に破れ一時海南島に左遷されます。

この詩は左遷を解かれて本土に呼び戻される時、
海南島の北部の【澄邁駅】にある楼台【通潮閣】に登って、
詠んだものです。

【帝 巫陽をして 我が魂を招かしむ】、
『楚辞・招魂』に見える、天帝が巫女をつかわして
屈原の魂を呼び戻した話によります。

蘇軾は自分を古代の忠臣屈原と重ねているのです。

屈原の詩です。
屈原「湘夫人」

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朗読:左大臣光永

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