陶淵明「居を移す 二首」

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本日は、陶淵明の詩「居を移す 二首」を読み、解釈します。

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移居 二首 陶淵明

其一

昔欲居南村
非爲卜其宅
聞多素心人
樂與數晨夕
懷此頗有年
今日從茲役
敝廬何必廣
取足蔽牀席
鄰曲時時來
抗言談在昔
奇文共欣賞
疑義相與析

其二

春秋多佳日
登高賦新詩
過門更相呼
有酒斟酌之
農務各自歸
閑暇輒相思
相思則披衣
言笑無厭時
此理將不勝
無爲忽去茲
衣食當須紀
力耕不吾欺

居(きょ)を移す 二首 陶淵明

其の一

昔 南村(なんそん)に居(お)らんと欲せしは、
其の宅(たく)を卜(ぼく)せし為(ため)には非(あら)ず
素心(そしん)の人多しと聞き
与(とも)に晨夕(しんゆう)を数々(しばしば)せんことを楽(ねが)えばなり
此(こ)れを懐(おも)って頗(すこぶ)る年有り
今日(こんにち) 茲(こ)の役(えき)に従う
弊廬(へいろ) 何ぞ必ずしも広からん
牀席(しょうせき)を蔽(おお)うに足るを取る
隣曲(りんきょく) 時時(じじ)に来たり
抗言(こうげん) 在昔(ざいせき)を談(かた)る
奇文(きぶん)は共(とも)に欣賞(きんしょう)し
疑義(ぎぎ)は相与(あいとも)に析(ひら)く

其の二

春秋(しゅんじゅう)には佳日(かじつ)多く
高きに登って新詩(しんし)を賦(ふ)す
門を過ぐれば更(こも)ごも相呼(あいよ)び
酒有らば之(これ)を斟酌(しんしゃく)す
農務(のうむ)には各自(かくじ)帰り
閑暇(かんか)には輒(すなわ)ち相思(あいおも)う
相思えば則(すなわ)ち衣(い)を披(ひら)き
言笑(げんしょう)して厭(あ)く時無し
此(こ)の理(り) 将(は)た勝(まさ)らざらんや忽(おろそ)かに茲(ここ)より去るを為(な)すかれ衣食(いしょく) 当(まさ)に須(すべから)く紀(おさ)むべし
力耕(りきこう) 吾(わ)れを欺(あざむ)かず

現代語訳

その一

昔、南村に住みたいと思ったのは、
方角を占って吉と出たせいではない。

素朴な人が多いと聞いたからだ。
そういう人たちと朝夕を共にしたいと思ったのだ。

最初にそう考えてからずいぶん年月が流れたが、
今日、やっと引っ越すことができた。

私が住むだけの庵である。そう広い必要は無い。
寝台と椅子があれば、十分だ。

近所の友人が時々訪ねてきてくれる。
昔話に声を弾ませ、すぐれた文章があれば共に味わう。
疑問に思うことがあれば一緒に研究する。

その二

春と秋には晴れた日が多く、
高台に登って新しい詩を作る

門を過ぎるたびにそれぞれ声をかけあい、
酒があればこれを酌み交わす

農作業にはそれぞれ帰っていくが、
暇な時はすぐにお互いのことを思う

お互いのことを思えばすぐに衣を着崩して、
笑い話をして飽きることがない

この道理にまさるものなどあろうか
むげにこの地を捨てて去ろうとすべきではない

衣食は自分で作り出すべきものだ
がんばって畑を耕せば、裏切られることはない

語句

■南村 場所は諸説あり未詳。 ■卜 家を決めるにあたり吉凶を占う。 ■素心 飾り気のない心。 ■数晨夕 朝夕顔をあわせる。 ■弊廬 私の住む庵。「弊」はへりくだった言い方。 ■牀席 夜寝る床と昼居る座。 ■隣曲 近所。また近所の人々。 ■抗言 熱く語ること。 ■在昔 むかし。往昔。 ■奇文 すばらしい文章。 ■欣賞 鑑賞すること。 ■疑義 意味がわからないところ。 ■析 研究すること。

■佳日 晴れた日。 ■高登 九月九日重陽の節句に高台に登って椒の小枝をかかげ菊酒を飲む習慣。 ■斟酌 酒を酌む。 ■披衣 衣を傾けて着る。くつろいだようす。

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