壇の浦夜泊 木下犀潭(だんのうらやはく きのしたさいたん)

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壇浦夜泊 木下犀潭
篷窓月落不成眠
壇浦春風五夜船
漁笛一聲吹恨去
養和陵下水如煙

壇ノ浦夜泊(だんのうらやはく) 木下犀潭(きのしたさいたん)
篷窗(ほうそう)月落(つきお)ちて眠(ねむ)りを成(な)さず
壇ノ浦(だんのうら)の春風(しゅんぷう) 五夜(ごや)の船(ふね)
漁笛(ぎょてき) 一聲(いっせい) 恨(うらみ)を吹(ふ)いて去(さ)る
養和陵下(ようわりょうか) 水(みづ) 煙(けむり)の如(ごと)し

現代語訳

苫葺きの窓から外を眺めると月は没してしまったが、いまだに眠れない。

早朝、壇ノ浦の海域を吹く春風の中、漁船が出発していく。

漁師の吹く笛は平家一門の恨みをこめているかのごとく響き渡る。

安徳帝の陵を眺めやると、陵の下の水面が煙のようにわきたっている。

語句

■壇ノ浦 九州と本州との間の海峡。元暦ニ年(1185)三月二十四日、源平の最終決戦が行なわれ、平家一門は海に沈んだ。 ■蓬窗 とまをかけた舟の窓。 ■不成眠 眠れない。 ■漁笛 漁師の吹く笛 ■春風 壇ノ浦の合戦が行なわれたのは旧暦三月二十四日。その合戦の日付をふまえる。 ■五夜 夜明け前の時間。五更とも。一夜を五等分して初更・二更・三更・四更・五更といった。 ■養和 源平合戦が行なわれたころの年号。1181年から82年にかけて。 ■養和の陵…現下関市赤間神宮内にある安徳天皇の陵(墓)。明治以前は阿弥陀寺といったが明治政府の神仏分離により一時廃止され、その後赤間神宮となって復活した。 ■水如煙 水が靄になって煙のように沸き立っている。

作者 木下犀潭

木下犀潭(きのしたさいたん 1805-1867)。江戸時代末期の武士・儒学者・熊本藩士。肥後菊池郡の裕福な農家に生まれます。藩校時習館に学び、成績優秀により名字帯刀を許されます。

天保6年(1835年)江戸の昌平黌(しょうへいこう)、佐藤塾にて儒学者佐藤一斎に入門。肥後へ帰国後、時習館の訓導となります。

門下には坂本龍馬に影響を与えた漢学者横井小楠がいます。1867年明治維新の前年に没しました。

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朗読:左大臣光永

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