晁卿衡を哭す 李白
李白が阿倍仲麻呂のことを詠んだ詩です。
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哭晁卿衡 李白
日本晁卿辞帝都
征帆一片繞蓬壷
明月不帰沈碧海
白雲愁色満蒼梧
晁卿衡(ちょうけいこう)を哭(こく)す 李白
日本の晁卿(ちょうけい) 帝都を辞す
征帆(せいはん) 一片(いっぺん) 蓬壷(ほうこ)を繞(めぐ)る
明月(めいげつ)帰らず 碧海(へきかい)に沈む
白雲(はくうん) 愁色(しゅうしょく) 蒼梧(そうご)に満つ
現代語訳
日本の友人、晁衡は帝都長安を出発した。
小さな舟に乗り込み、日本へ向かったのだ。
しかし明月のように高潔なあの晁衡は、
青々とした海の底に沈んでしまった!
愁いをたたえた白い雲が、
蒼梧山に立ち込めている。
語句
■晁衡 仲麻呂の中国名。■征帆 往く船。 ■繞 曲がりくねりつつ、進むこと。 ■蓬壷 東海の果てにあるという蓬莱山のこと。ここでは日本を指す。 ■明月 仲麻呂の人柄を月に例えている。■蒼梧 中国湖南省寧遠県にある山。伝説上の皇帝・舜が行幸中に病死した場所。「旅の途上の死」という連想になる。
解説
阿倍仲麻呂は717年、19歳の時、遣唐使の一員として吉備真備らと共に唐に渡ります。
長安で仲麻呂は科挙に合格。唐王朝の役人として玄宗皇帝に仕えます。そして李白や王維といった詩人たちと交流を持ちました。
36年後の753年(安史の乱の2年前)仲麻呂は帰国を許されます。
ところがその船が台風で難破したという知らせが入ります。
その知らせを受けて、李白が詠んだ詩がこれです。
ただし仲麻呂はベトナムに漂着していました。
ベトナム経由で再び長安に戻り、粛宗・代宗に仕え73年の生涯を終えます。
二度と日本の地を踏むことはありませんでした。
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