金陵城西樓月下吟 李白

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金陵城西樓月下吟 李白
金陵夜寂涼風發
獨上高樓望呉越
白雲映水揺空城
白露垂珠滴秋月
月下沈吟久不歸
古来相接眼中稀
解道澄江浄如練
令人長憶謝玄暉

金陵の城西楼(じょうさいろう)にて月下の吟 李白
金陵 夜 寂(じゃく)として 涼風(りょうふう)発(おこ)り
独(ひと)り高楼(こうろう)に上(のぼ)りて 呉越(ごえつ)を望む
白雲(はくうん) 水に映(えい)じて空城(くうじょう)を揺(ゆ)り
白露(はくろ) 珠(たま)を垂れて秋月(しゅうげつ)に滴(したた)る
月下に沈吟(ちんぎん)して 久しく帰らず
古来 相い接(つ)ぐもの 眼中(がんちゅう)に稀(まれ)なり
道(い)い解(え)たり、「澄江(とうこう)浄(きよ)きこと練(ねりぎぬ)の如し」と
人をして長く謝玄暉(しゃげんき)を憶(おも)は令(し)む

金陵

現代語訳

金陵では夜が静かにふけていく。涼しい風が吹く中、
私は一人高台にのぼって呉越地方を望むのだ。

白い雲が水にうつって、人気の無い城郭の姿を水面にゆらし、
白露は数珠をなし、秋の月を映してしたたり落ちる。

月の下で声を抑えて詩を吟じる。長い間家に帰らず旅を続けているが、
古来、その業績を継ぐべき詩人は私の眼中にはほとんどいない。
よく言ったものだ。「長江が澄んでいることは、まるで練り絹のようだ」とは。

この文句が、南朝時代の詩人謝朓を、私に長く慕い続けさせるのだ。

語句

■金陵 現在の南京。南朝の各王朝の首都。 ■呉越 呉(江蘇省―宜城)と越(浙江省―会稽)の地方。 ■空城 人気の無い城郭の姿。 ■沈吟 声を抑えて詩を吟ずる。 ■解道 よく言ったものだ。表現の巧みさを褒めている。 ■澄江浄如練 南朝時代の斉の謝朓「晩登三山還望京邑」(澄江静かなること練の如し)より。 ■玄暉 南北朝時代の斉の詩人、謝朓の字。李白は謝朓を敬愛していた。

解説

金陵は現在の南京です。歴史ある古い町並み、にぎやかな歓楽街、演芸場…李白は金陵の町をとても気に入っており、生涯に何度も訪れています。金陵には三国時代の呉、東晋、南朝の宋・斉・梁・陳の首都が置かれました。

次の隋の時代には破壊され農地になりますが、唐の時代になって金陵は都市として復活します。繁栄と衰退の壮大な歴史ロマンが、金陵の町には、つまっているのです。歴史好きの李白にはたまらない場所だったことでしょう。

後半で「澄江(とうこう)浄(きよ)きこと練(ねりぎぬ)の如し」と謝朓の詩の文句を引用しています。謝朓は南北朝時代の詩人で、李白がたいへん尊敬していた人物です。

次の漢詩「金陵の鳳凰台に登る

朗読:左大臣光永

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