白楽天「岳陽樓に題す」

こんにちは。左大臣光永です。

長い休みが終わり、いまだに体がだるいという方もいらっしゃるかもしれませんね。

私の仕事は世間の休みなど関係ないんですが、それでも世間が休んでいると、なんとなくダラけた気分になって、ちょっとイッパイと、酒を飲みすぎてしまうということが、ありました。

本日はゴールデンウィーク明けの疲れた脳に、負担にならない、ごくあっさりした、短い漢詩を読みます。

「岳陽樓に題す」。作者白楽天が赴任先の四川省に向かう途中、洞庭湖のほとりの名勝、岳陽樓に登って詠んだ詩です。

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題岳陽楼 白楽天

岳陽城下水漫漫
独上危楼凭曲欄
春岸緑時連夢沢
夕波紅処近長安
猿攀樹立啼何苦
雁点湖飛渡亦難
此地唯堪画図障
華堂張与貴人看

岳陽楼に題す 白楽天
岳陽城下 水漫漫たり
独り危楼(きろう)に上りて曲欄(きょくらん)に凭(よ)る
春岸(しゅんがん)緑にして時に夢沢(ぼうたく)に連なり
夕波(ゆうは) 紅(くれない)なる処 長安に近し
猿は樹(き)に攀(よ)じて立ち啼(な)くこと何ぞ苦しき
雁(かり)は湖(みずうみ)に点(てん)して飛び渡ること亦(また)難し
此地(このち) 唯だ 画図(がと)の障となし
華堂(かどう)に張り貴人に与えて 看しむるに堪うるのみ

■岳陽樓 洞庭湖東岸に立つ楼台。古くから多くの詩に詠まれる。 ■危楼 高楼。 ■曲欄 曲がった手すり。 ■夢沢 雲夢沢。古代の湖の名。 ■画図障 絵屏風。 ■華堂 豪華な屋敷。

岳陽楼のもと、洞庭湖に水が漫々とたたえている。
独り楼台に登り、曲がりくねった欄干によりかかる。

春の岸辺に緑に色づく若草が続き、そのかなたに雲夢沢(湖の名)がある。
夕暮れの波が紅に染まる。そのあたりは長安にも近そうに思える。

猿は木に登って立ち、その鳴き声は哀しみをかきたてる。
雁は湖の上を点々と飛ぶが、この広い洞庭湖を飛び渡ることは難しかろう

この地の景色は屏風絵にして、豪華な座敷に張り、貴人に与えて見せるのにぴったりだ。

……

江州(現 江西省一九江)に左遷されていた作者は、新たに忠州(四川省忠県)での任務を受け、長江をさかのぼって赴任先へ向かいました。その途中、岳州(湖南省岳陽)の名勝、岳陽楼に登って詠んだ詩です。

洞庭湖ほとりの岳陽楼は古くからの名勝で、数々の歌に詠まれています。

登岳陽楼 杜甫
昔聞洞庭水
今登岳陽楼
呉楚東南サケ
乾坤日夜浮
親朋無一字
老病有孤舟
戎馬關山北
憑軒涕泗流

岳陽楼(がくようろう)に登る 杜甫
昔聞く洞庭(どうてい)の水、
今登る岳陽楼。
呉楚(ごそ)東南に?け、
乾坤(けんこん)日夜浮かぶ。
親朋(しんぽう)一字無く、
老病(ろうびょう)孤舟(こしゅう)あり。
戎馬(じゅうば)関山(かんざん)の北、
軒(けん)に憑(よ)れば涕泗(ていし)流る。

かねて噂に聞いていた洞庭湖を訪れ、そのほとりの岳陽楼に登る。

呉楚の東南の地方が二つに裂けたという洞庭湖には、宇宙のすべてが一日中浮かんでいるようだ。

手紙をくれるような親類も友達もなく、老いて病持ちの私には持ち物といっても小舟が一双あるだけだ。

関山の北ではまだ今も戦が続いているという。

楼のてすりに寄りかかっていると、涙が流れてくる。

……
同じ洞庭湖を描いても、白楽天と杜甫の作風の違いが出ていて興味深いですね。

……

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