白楽天「客中月」

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客中月 白楽天
客従江南来
来時月上弦
悠悠行旅中
三見清光円
暁随残月行
夕与新月宿
誰謂月無情
千里遠相逐
朝発渭水橋
暮入長安陌
不知今夜月
又作誰家客

客中(かくちゅう)の月(つき) 白楽天
客(かく) 江南従(こうなんよ)り来たる
来たる時 月 上弦(じょうげん)なりき
悠悠(ゆうゆう)たる行旅(こうりょ)の中(うち)
三(み)たび清光(せいこう)の円(まどか)なるを見る
暁(あかつき)には残月(ざんげつ)に随(したが)いて行き
夕(ゆうべ)には新月(しんげつ)と宿(やど)りぬ
誰(たれ)か謂(い)う 月に情(じょう)無しと
千里(せんり) 遠く相逐(あいお)えるに
朝(あした)に渭水(いすい)の橋(はし)を発(た)ち
暮(くれ)に長安の陌(まち)に入(い)る
知らず 今夜(こんや)の月
又(また)誰(た)が家の客(かく)と作(な)るかを

現代語訳

旅人である私は江南から来た。
来た時は、上弦の月が出ていた。
悠々たる旅路のうちに、
三度、月が満月になるのを見た。
暁は残月に従って出発し、
夜は新月とともに休む
誰が言うのだ。月に情が無いなんて。
月は千里の道のりを私に従ってきてくれたのに
朝に渭水にかかる橋を渡り、
暮れには長安の町に入る。
私は知らない。今夜の月はどうなるかを。
また誰の家の客人となるかを

語句

■客中 旅行中。 ■江南 長江下流域。蘇州(江蘇省)あたり。 ■清光 月の明かり。 ■逐 おいかける。したがう。 ■渭水 長安城の西にかかる橋。長安から西へ行く旅人は渭水にかかる橋をわたって出発した。東からの旅人が長安に入る時にわたるのは渭水でなく灞水(はすい)。白楽天の記憶違いか?  ■陌(ハク) 街路。東西にのびる道。南北にのびる道は阡(セン)。

解説

江南(長江下流域)から長安まで向かう旅路を歌った詩です。おそらく蘇州か杭州から出発し、大運河を利用して、黄河に入り、洛陽から長安までは陸路で行ったのでしょう。月を擬人化してとらえ、千里を旅路をしたがってくれたと見るところが洒落ています。

江南→長安
江南→長安

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朗読:左大臣光永

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