峨眉山月の歌 李白(がびさんげつのうた りはく)

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峨眉山月半輪秋
影入平羌江水流
夜發清溪向三峽
思君不見下渝州

峨眉山月半輪の秋
影は平羌江水に入って流る
夜 清溪を發して三峽に向ふ
君を思へども見えず渝州に下る

現代語訳

秋の峨眉山には片割れ月がかかり、
月影は平羌の流れに映りこんで流れていく。
私は夜に清渓を出発して三峡に向かう。
川下りの間ずっと月を見たいと思っていたのだが、とうとう見えないまま渝州に下ってしまった。

解説

李白の詩ではたぶん一二をあらそう知名度でしょう。

「峨眉山」「平羌」「清溪」「三峽」「渝州」と5つも固有名詞(地名)を織り込んでいるのがポイントです。

しかもこれは単なる地名ではなく、文字の持つイメージが大切です。「眉」「平」「清」は「月」を導く縁語なのです。

明の文章家、王世貞(おうせいてい)(1526-90)はこの詩を「太白の佳境なり」と絶賛しました。

「君」とは恋人のことか、月のことかと、議論があります。まあどっちにしても雰囲気がある詩じゃあないですか。

李白の詩にしては珍しく、作られた時期、状況がハッキリしています。李白が少年・青年時代を過ごした蜀を離れ、長江を下って江南へ向かった25歳の時の詩とされます。

これから三峡のけわしい流れをこの小舟で下っていく…実社会に出て行く意気込みをあらわしてるんでしょうか。

【峨眉山】は四川省峨眉の東南にあるけわしい山。最初「蛾眉」と書いていたのを「峨眉」と改めました。二つの峰が向かい合って蛾の眉のように見えるからこう言うそうです。

五大山、天台山と並び、仏教の霊場として知られます(芥川龍之介の小説「杜子春」に仙人の住む山として登場します)

【平羌江】は峨眉山の北側を流れる青衣江(せいいこう)の古い呼び名。四川省雅安県から峨眉山の北を流れ、大渡河と合流します。諸葛亮孔明が羌夷を平定したのでこう呼びます。

【三峡】は四川省の奉節県から湖北省の宣昌までの大渓谷。途中三つの渓谷があるのをまとめて、「三峡」といいます。

その三つをどれにするかは諸説あり、広渓峡・巫山峡・西陵峡・明月峡・黄牛峡・瞿塘峡・石洞峡・帰郷峡などの中から三つを数えるかんじです。

【清渓】は宿駅の名。四川省漢源県。 【渝州】 今の重慶。

経路としては【清渓】⇒【渝州】⇒【三峡】と進んだわけです。

同じく有名な「早に白帝城を発す」も、三峡下りを扱った詩です。

朗読:左大臣

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