天草洋に泊す(泊る) 頼山陽(あまくさなだにはくす  らいざんよう)

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泊天草洋
雲耶山耶呉耶越
水天髣髴青一髪
万里泊舟天草洋
煙横篷窓日漸没
瞥見大魚波間跳
太白当船明似月

天草洋に泊る
雲か山か呉か越か
水天髣髴 青一髪
万里舟を泊す 天草の洋
煙は篷窓に横たわって 日漸く没す
瞥見す 大魚の波間に跳るを
太白 船に当たって 明るきこと月に似たり

現代語訳

雲だろうか山だろうか
または呉の国か、越の国か。

空と海が一つにとけあってぼうっと青く霞み、
一本の髪の毛のように見える。

はるばる旅をしてきて今は天草灘で舟に乗っている。
苫舟の窓のあたりに夕もやがたちこめ、日はようやく沈もうとしている。

波の間に大きな魚が跳ねるのがチラリと見えた。
宵の明星が舟の正面で輝き、まるで月のように明るい。

解説

頼山陽が西遊した際、つくった漢詩です。

雲か山か呉か越か」の型破りな書き出しが印象に残ります。細かな語句の意味は知らなくても、なにかドカーッと、ハデな感じが伝わってきます。

【天草灘】 長崎と熊本の間に横たわる海。
【呉】【越】 中国江南地方の地域名。孫子「呉越同舟」参照。

【水天】 海と空。 【髣髴】ほうふつ。さながら。
梅堯臣「夜、隣家の唱うを聴く」に「髣髴梁塵飛」と。
【青一髪】 青い一筋の髪の毛。

【煙】 夕もや。 【篷窓】 カヤを掛けた舟の窓。
【瞥見】ちらりと見る。 【太白】明けの明星。金星。

孟浩然「建徳江に宿す」は、主題において通じるものがあります。こっちはハデさでなく、旅愁のシミジミ感で勝負してます。

頼山陽(1780-1832)。江戸時代の歴史家、漢詩人、文人。陽明学者。安芸(広島)の人。『日本外史』の編纂で知られます。

漢詩では特に「不識庵の機山を撃つ図に題す」が有名。詩吟でたいがい一番最初にならうやつです。「べんせいーーぃィィ しゅくしゅくゥゥウゥゥ」ていう、アレです。

朗読:左大臣

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