秋来 李賀(あききたる りが)

秋来
桐風驚心壯士苦
衰燈絡緯啼寒素
誰看靑簡一編書
不遣花蟲粉空蠹
思牽今夜腸應直
雨冷香魂弔書客
秋墳鬼唱鮑家詩
恨血千年土中碧

秋来たる
桐風 心を驚かし 壯士苦しむ
衰燈 絡緯 寒素に啼く
誰か看ん 靑簡一編の書を
花蟲をして粉(こなごな)に空しく蠹(むしば)ましめざる
思に牽かれて 今夜 腸(はらわた)応(まさ)に直なるべし
雨は冷ややかにして 香魂 書客を弔う
秋墳 鬼は唱う 鮑家の詩
恨血 千年 土中の碧

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現代語訳

気がつくと桐の葉を散らして風が吹き荒れる季節となった。
自分では豪胆なつもりなのだが、さすがにこの季節は千々に思いが乱れる。

微かな灯りが室内を照らし、ハタオリの音が寒々とすすり泣いているようだ。

私のこの詩集を、いったい誰が読んでくれるだろう。
紙魚に食われて虫食いだらけになるだけではなかろうか。

こんな思いに引かれて、今夜腸が伸び切って死んでしまいそうだ。

冷ややかな秋雨の中、かぐわしい古人の魂が書生の私を訪ねてきて 弔ってくれる。

墓の前で古人の霊が鮑家の詩を歌っている。

私の恨み多い血は千年かけて土中で碧玉となるだろう。

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解説

李賀は李白や杜甫のように「誰でも知ってる」というわけではないですが、この独特な感覚、ハマる人はハマるみたいです。

独特としか言いようがないです。そして難解です。この「秋来る」も…ぼくにはよくわかりませんでした。

ただ、詩人としての名声がどうなっていくのか、いろいろ悩んでる感じはわかりました。

中島敦の『山月記』を思い出しました。詩人に成りそこなった男が虎になる話です。

「羞しいことだが、今でも、こんなあさましい身と成り果てた今でも、己(おれ)は、己の詩集が長安風流士の机の上に置かれている様を、夢に見ることがあるのだ。岩窟の中に横たわって見る夢にだよ。嗤ってくれ。詩人になりそこなって虎になった哀れな男を。」(中島敦『山月記』より)

『山月記』の主人公、李徴(りちょう)は理屈ばっかりで詩をちっとも発表しませんでした。自尊心ばかり高く、そのために虎になっちゃうのです。

同じく悩んでいても、ちゃんと作品を発表した李賀ははるかに立派だと思います。

夢天」←李賀の代表作です。幻想的な世界を描き出しています。難しいけど…。

朗読:左大臣