清平調子 其一 李白

742年。42歳の李白は長安に登り、
賀知章(がちしょう 659-744)の知遇を得ます。

742年、李白は賀知章の推挙を受けて翰林供奉となります。
時に李白42歳。いよいよ志がかなえられる時が来ました。

仕事は主に皇帝の行幸に付き添い、記念的な詩を詠む
宮廷詩人のようなものでした。

この時期の李白の作品として、
楊貴妃の美しさを牡丹の花にたとえた「清平調詞」三首が
今に伝わっています。

清平調子 其一 李白
雲想衣裳花想容
春風拂檻露華濃
若非羣玉山頭見
會向瑤臺月下逢

清平調子 其一 李白
雲には衣装を想い 花には容(かたち)を想う
春風(しゅんぷう) 檻(おばしま)を払って 露華(ろか) 濃(こま)やかなり
もし群玉山頭(ぐんぎょくさんとう)に見るあらずんば
会(かなら)ず瑶台月下(ようだいげっか)に向(む)かいて逢はん

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現代語訳

雲を見ると楊貴妃の衣装が目に浮かび、
花を見ると楊貴妃のあでやかな姿が
目に浮かぶ。

春風が沈香亭の欄干の手すりを払い、牡丹の花に降る
美しい露が、見事に輝いている。

こんな美しい人には仙女のもとじめである西王母のすむ
郡玉山の山頂でなければ
仙人のすむ瑶台の月明かりの下でしか、めぐり会えないだろう。

語句

■容 容貌 ■檻 宮中の手すり ■露華 美しい露 ■郡玉山 仙女のもとじめである西王母のすむ山。西王母のまわりにはたくさんの仙女がつかえている。 ■瑤台 仙女のすみか

解説

うららかな春の日、玄宗皇帝と楊貴妃は
長安興慶宮の沈香亭というあずま屋でお花見をしていました。
たくさんのお供を引き連れて、ひらひらと扇で優雅に楊貴妃を
あおいでいる者もいます。

「まあ、牡丹がキレイだこと」
「いやいや、どんな花も貴妃の美しさの前では色あせる」
「まあ、陛下ったら」

玄宗皇帝は、牡丹の美しさを、そして楊貴妃の
美しさを歌わせようと、宮廷おかかえの歌手・李亀年を呼び出します。

李亀年がすーっと息を吸い込んで、
まさに歌い始めようとしたその時、

「いや待て!」

玄宗皇帝は李亀年とその楽団を止めます。

「ありきたりの歌詞ではつまらない。
新しい時代には新しい歌詞。あの男に作らせようではないか。
李白をよべい」

すぐに使いの者が李白を呼びにいきます。
しかし、李白はどこにいるかわかりません。
玄宗皇帝のお抱え詩人となったものの、李白はいつもマイペースで、
人に命令されることを嫌いました。

「きっと居酒屋に違いない」

使いの者が長安の飲み屋街を探し回ると、

「おらあ、酒持って来い」

居酒屋の軒先で、昼間っから酔っ払っている李白の姿が。

「なにい、詩をつくれ。それなら任せとけ」
(だいじょうぶかな…)

使いの者は内心不安に思いながらも李白を興慶宮の沈香亭まで
ひっぱってきます。

「うわっぷ。お前、また飲んでいるのか」
「ははは、陛下。酔っているのは、むしろ李白にとって力です。
よい詩の力が降りてくるのです」

筆をわたされた李白、すらすらすら…
一気に三首の詩を書き上げました。

雲想衣裳花想容
春風拂檻露華濃
若非羣玉山頭見
會向瑤臺月下逢

牡丹の花になぞらえて、
楊貴妃の美しさを褒め称えているわけです。

「群玉山頭」は群玉山の山頂。「群玉山」は
仙女のもとじめたる西王母がすむという
伝説の山です。西王母のまわりには
たくさんの仙女がはべっていました。

また「瑤台」は仙女がすむという楼台です。
そういう、群玉山や瑤台の仙女たちよりも、
楊貴妃はずっとずっと美しい。楊貴妃を持ち上げた詩です。

関連

清平調子 其二
其一のつづきです。

朗読:左大臣

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