内に贈る 李白
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内贈 李白
三百六十日
日日醉如泥
雖爲李白婦
何異太常妻
内(つま)に贈る 李白
三百六十日(さんびゃくろくじゅうにち)
日日(にちにち) 醉(よ)うて泥(でい)の如(ごと)し
李白の婦(ふ)と爲(な)ると雖(いえど)も
何ぞ太常(たいじょう)の妻(つま)に異(ことな)らん
現代語訳
一年三百六十日、
毎日泥のように酔っ払っている。
李白の嫁になったといったって、
これではお前、太常の妻とかわらないね。
語句
■泥 「ドロ」ではなく、南方の海にいたとされる軟体動物「泥(でい)」のこと。海中では自由に動き回るが、陸地に上がるとグッタリしてしまうことから、酔っ払いの例え。
解説
李白が妻に贈った詩です。李白は生涯何人かの妻を持ちましたが、
どの妻に、どんな状況で贈ったかはわかっていません。
「三百六十日」旧暦では一年を353~355日とし、
これに閏年を設けてバランスを取っていました。
「泥」は「ドロ」ではなく、
南方の海にいるという空想上の軟体動物「泥(でい)」のことです。
海中では自由に動き回るが、陸地に上がるとグッタリしてしまうといいます。
今日「泥酔」という言葉がありますが、あれの語源です。
「泥のように酔っ払う」が語源と思っている人が多いですが、間違いです。
「太常」は、宮中で皇帝の先祖を祭る神主のことです。
後漢時代、周澤という太常職の男がいました。
この周澤がある時病気になり、廟内で休んでいました。
そこへ妻がお見舞いに来ます。
しかし、周澤は怒り狂います。
「お前のせいで、神聖な場が
穢れてしまった!どうしてくれるんだ!」
「そんな、私はあなたのために…」
「やかましい!!」
とうとう周澤は妻を捕えて牢屋に入れてしまいました。
これじゃあ奥さんはむくわれませんよね。ひどい話です。
「割りにあわぬは太常の妻。
一年三百六十日、
三百五十九日は物忌み、
一日は泥のように酔いつぶれる」
…世間ではこう言って、はやしたてました。
李白はこの故事をふまえ、ユーモアまじりに
言っているのです。いつも酒ばっかり飲んで、家を空けて、すまんなと。
また奥さんのほうも、こんな高度なたとえが理解できるくらいなので、
よほど学問のあった女性なのでしょう。
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