生年は百に満たず

本日は、漢詩の朗読と、解説です。「生年(せいねん)は百(ひゃく)に満(み)たず」。

人生は長くないのだから、楽しめる時に楽しめ、という内容です。

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生年不滿百 無名氏
生年不滿百
常懷千歳憂
晝短苦夜長
何不秉燭遊
爲樂當及時
何能待來茲
愚者愛惜費
但爲後世嗤
仙人王子喬
難可與等期

生年(せいねん)は百(ひゃく)に満(み)たず 無名氏(むめいし)
生年(せいねん)は百(ひゃく)に満(み)たざるに
常(つね)に千歳(せんざい)の憂(うれ)いを懐(いだ)く
昼(ひる)は短(みじか)くして夜(よる)の長(なが)きに苦(くる)しむ
何(なんそ)ぞ燭(しょく)を秉(と)って遊(あそ)ばざる
楽(たの)しみを為(な)すは当(まさ)に時(とき)に及(およ)ぶべし
何(なん)ぞ能(よ)く来茲(らいし)を待(ま)たん
愚者(ぐしゃ)は費(ひ)を愛惜(あいせき)して
但(た)だ後世(こうせい)の嗤(わら)いと為(な)る
仙人王子喬(せんにんおうしきょう)と
与(とも)に期(き)を等(ひと)しくすべきこと難(かた)し

現代語訳

人の寿命は百に満たないのに、
君はいつも千年先のことまで心配している。
昼が短くて夜は長いといって苦しむなら、
どうして灯を手にして夜通し遊ばないのか
楽しむのには時というものがある
どうして来年まで待っていられよう
愚者はわずかな無駄を惜しんで節約にはげむが、
ただ後世の笑い者となるだけだ
仙人王子喬と同じくらい長生きすることなんて、できはしないのに

語句

■千歳憂 千年先のことまで心配する。 ■秉燭 灯を手にして。 ■及時 時をのがさない。チャンスを確実につかむ。 ■來茲 来年。 ■王子喬 周の霊王の太子晋。笙を愛好する風流人で政務には興味がなかった。道士にみちびかれて仙人となり、白い鶴に乗って仙界に飛び去ったという。 ■等期 同じくらい長生きすること。

解説

生年は百に満たず。百歳になるで生きられることはまずないんだから、好きなようにやれってことです。

とくに人生後半になって、終わりが見えてくると、あるていど好き勝手ふるまってもいいと思うんですよ。どうせ後死ぬんだけなんだから。

そういう気持ちが行き過ぎちゃうと、コンビニで怒鳴り散らすクレームじいさんが生まれてしまうんですが、クレームじいさんはおすすめできないです。なぜならクレームつけたら自分も嫌な気持ちになるだけだから。

そうではなくて、自分の言いたいことやりたいことをばーーっと出すのに、恥とか、人の目を気にしないということですね。

聞き上手こそが人に好かれますと。よく言われるじゃないですか。自分の話はするもんじゃない。相手の話に耳をかたむけましょうと。しかしこれもどうかと思うんですよ。若い人に対しては有益なアドバイスですが、40歳過ぎたら、もう好かれようが嫌われようが、同じですからね。好かれたって金がもうかるわけでもないし。嫌われたって殺されるまではいかないですから。

むしろ人生後半に入ったら、多少嫌われても、自分の言いたい事はベラベラと最後までしゃべった方がいいと思います。出し尽くした方がいいですよ。その方が死ぬ時に後悔が残らないんじゃないかな。

生年は百に満たず。百歳まで生きられることはまずないのだから、最後の20年30年ぐらい、まわりに迷惑かけてもいいじゃないですか。べらべら自分の言いたいこと好きなことを全部吐き出してください。

きっと周囲も、あああの人はもう頭がぼけているからね。仕方がないねと、大目に見てくれます。

人生後半に入ったら、生年は百に満たずの心で、言いたいことはぜんぶ言う。嫌われても気にしない。どうせ後死ぬだけなんだから。べらべらべらべら、ぜんぶ吐き出す。生年は百に満たず。生年は百に満たず。

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朗読:左大臣