李白「静夜思」
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静夜思 李白
牀前看月光
疑是地上霜
擧頭望山月
低頭思故郷静夜思(せいやし) 李白
牀前(しょうぜん)月光(げっこう)を看(み)る
疑(うたが)うらくは是(これ)地上の霜かと
頭(こうべ)を挙(あ)げて山月(さんげつ)を望(のぞ)み
頭(こうべ)を低(た)れて故郷(こきょう)を思う
現代語訳
寝台の前に月光が差している。まるで地表を霜が覆っているかと見まがうほどだ。
頭を上げて山ぎわにかかる月を見ていると、だんだん頭が垂れてきて 気が付くと故郷のことをしみじみ思っていた。
語句
■牀 「床」に同じ。寝台。 ■疑是 ~と疑われるほどである。
解説
「静夜思」は楽府題(がふだい)の一つです。「楽府(がふ)」とは、もともと前漢時代くらいから宮中に設置された音楽担当の役所ののことです。
この「楽府」という役所では各地の歌謡や民謡を収集し研究していました。そこで後には楽府で収集された歌謡や民謡のことをも「楽府」と呼ぶようになりました。「楽府題」は「楽府」のお題のことです。
お題…つまり、「静夜思」というタイトルの曲があり、そこに色々な人がいろいろな歌詞をつけたわけです。
李白が31歳の時、安陸(湖北省安陸市)の小寿山にいたときの作といわれます。
訳の必要もないくらいわかりやすく、日本でも大変に人気が高いですね。派手な表現もなく、しっとりした落ち着いた感じが、日本でも受け入れられやすいのだと思います。
転句と結句が対になっています。「頭を挙げて山月を望む」そして山月を見ていると、だんだん、知らず知らずのうちに頭がさがってきます。
そして気が付いたらうつむいて、故郷のことを考えていた…「山を見て」→「故郷を思う」までかなり時間経過があるのがポイントです。
清代の『唐詩三百選』では、起句が「牀前明月光(牀前明月の光)」、転句が「擧頭望明月(頭を挙げて明月を望み)」になっています。日本でなじみ深いこの形は明代の『唐詩選』によります。
私はやはり清代のよりこの形が好きです。「明月」を二回繰り返すのは、イキじゃないと思います。
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