猫を祭る 梅堯臣(ねこをまつる ばいぎょうしん)

■【中国語つき】漢詩の朗読を聴く
【古典・歴史】メールマガジンはこちら

祭猫 梅堯臣

自有五白猫
鼠不侵我書
今朝五白死
祭与飯与魚
送之于中河
呪爾非爾疎
昔汝噛一鼠
銜鳴遶庭除
欲使衆鼠驚
意将清我盧
一徒登舟来
舟中同屋居
糗糧雖甚薄
免食漏窃余
是実爾有勤
有勤勝鶏猪
世人重駆駕
謂不如馬驢
已矣莫復論
為爾聊欷歔

猫を祭る 梅堯臣

五白の猫を有してより
鼠は我が書を侵さず
今朝 五白死す
祭って飯と魚とを与う
之を中河(ちゅうか)に送って
爾(なんじ)を呪するは爾を疎(おろそ)かにするにあらず
昔 汝は一鼠(いっそ)を噛み
銜(くわ)え鳴きて庭除(ていじょ)を巡れり
衆鼠(しゅうそ)をして驚かしめんと欲し
意は将(まさ)に我が盧(いおり)を清めんとするなり
一たび舟に登ってより来(このかた)
舟中(しゅうちゅう) 屋(おく)を同じうして居る
糗糧(きゅうりょう) 甚だ薄しと雖も
漏窃(ろうせつ)の余を食らうことを免る
是実に爾の勤むる有ればなり
勤むる有ること鶏猪(けいちょ)に勝る
世人は駆駕(くが)を重んじ
馬驢(ばろ)に如かずと謂う
已んぬるかな 復(ま)た論ずる莫からん
爾の為に聊(いささ)か欷歔(ききょ)せん

猫の「五白」を飼ってからというもの、
鼠は私の書物をかじらなくなった。

今朝、その五白が死んだ。

その死体を祭って飯と魚を捧げた。川中に放って水葬にした。

五白よ、これは穢れを払ったのであって、お前を粗末に
扱ったわけではないのだ。

昔お前は一匹の鼠を捕まえて、
それをくわえて鳴きながら庭を駆け回ったことがあったね。

あれは鼠たちを威嚇して、
私の庵に手出しをさせまいとしてくれたのだね。

ひとたび舟に乗ってからは、
いつもお前と一緒だった。

乾飯はたいへん少なかったが、
鼠が小便をひっかけたりかじったのを
食べるハメにはならなかった。

それは実に、お前が頑張ってくれたおかげだ。

お前の働きは鶏や猪にも勝る。

世の人は 車馬を重んじて馬や驢馬が最高だなどと言うが…、
いや、言っても仕方無い。これ以上言うのはよそう。

お前のために、少し泣かせてくれ。

■五白 猫の名前。白い斑点が五つあるから名付けたか? ■中河 川の中ほど。 ■呪葬ること。 ■庭除 庭と階。転じて、単に庭。 ■衆鼠 たくさんのネズミ。ネズミども。 ■一徒 ひとたび。 ■糗糧 干飯(ほしいい)。 ■漏窃 ■漏はネズミに小便をひっかけられて濡れた状態。 ■窃はネズミにかじられた状態。 ■鶏猪 鶏や猪。 ■駆駕車馬。馬や驢馬に牽かせた車。 ■馬驢 馬や驢馬。 ■已矣 やんぬるかな。仕方が無い。 ■聊いささか。ちょっと。 ■欷歔 ききょ。すすり泣き。

………

梅堯臣(1002-1060)北宗時代の政治家・詩人。日本でいえば平安時代中期、藤原道長が活躍したよりちょっと後の時代の人です。

若い時に科挙に受からなかったため、長い間、うだつの上がらない役人生活を余儀なくされました。そのせいか生活臭あふれる、庶民の立場に立った詩が多いです。

作風は「平淡」を旨としました。派手な演出はしないということです。晩唐からはじまった、表現の華麗さを競う流行とは、正反対な考えでした。

猫とかミミズとか、日常のさりげないことをも詩にしました。ちょっと他の詩人には見られない特徴です。

次の漢詩「蚯蚓

朗読:左大臣光永

■【中国語つき】漢詩の朗読を聴く
【古典・歴史】メールマガジンはこちら