【漢詩】寒山「人は寒山の道を問うも」

本日は漢詩の朗読です。寒山の「人は寒山の道を問うも」。隠者(悟りにいたった人)にあこがれる者は多いが、かんたんには悟りの境地には入れない。中途半端なエセ隠者をいましめた詩です。

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人問寒山道 寒山
人問寒山道
寒山路不通
夏天冰未釋
日出霧朦朧
似我何由屆
與君心不同
君心若似我
還得到其中

人は寒山(かんざん)の道を問うも 寒山
人は寒山(かんざん)の道を問うも
寒山に路(みち)は通(つう)ぜず
夏天(かてん)にも氷は未(いま)だ釈(と)けず
日出(ひい)ずるも霧(きり)は朦朧(もうろう)たり
我に似るも何に由(よ)りてか届(いた)らん
君と心は同じからず
君が心 若(もし)し我と似らば
還(ま)た其中(そのなか)に到(いた)るを得(え)ん

現代語訳

人は寒山への道を尋ねるが、
寒山に道は通じていない。
夏でも氷が溶けず、
日が出ても霧が朦朧と立ち込めている。
私のマネをしても、到達することはできないよ。
君と私の心は同じではないのだ。
しかし君の心がもし私に似ているなら、
この仙人郷に入ることができるだろう。

語句

■寒山 天台山(浙江省)の近くの山。天台山は仏教・道教の聖地。ただし実在の山というより、悟りの境地、仙人郷という意味でいう。 ■其中 悟りの境地。仙人郷。

解説

寒山は、唐代(中唐)の伝説的な隠者の名であるとともに、中国浙江省天台山近くの山の名です。

人物としての寒山は、掛け軸の図柄や、森鴎外の小説「寒山拾得」で知られます。張継「楓橋夜泊」にうたわれた「湖蘇城外の寒山寺」(江蘇省蘇州)は寒山が身をよせた寺として知られます。

一方、「地名としての寒山」は、中国浙江省天台山近くの山の名で、寒山が住んでいたといいますが、実際の場所をさすというよりも、ここでは「悟りへ到る道筋」という意味で使われています。

ただしこの詩を事実、寒山が作ったとは考えづらく、寒山に仮託された詩とみるべきでしょう。「寒山ならこういう詩を作るだろう」というイメージのもと、作詩されたものと思われます。

寒山寺が詠みこまれた「楓橋夜泊」、
https://kanshi.roudokus.com/fuukyou.html

朗読:左大臣