飲馬長城窟行 陳琳(いんばちょうじょうくつこう ちんりん)

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飲馬長城窟行 陳琳
飲馬長城窟
水寒傷馬骨
往謂長城吏
慎莫稽留太原卒
官作自有程
挙築諧汝声
男児寧当格闘死
何能怫鬱築長城
長城何連連
連連三千里
辺城多健少
内舎多寡婦

飲馬長城窟行(いんばちょうじょうくつこう) 陳琳(ちんりん)
馬(うま)を長城(ちょうじょう)の窟(いわや)に飲(みずか)えば
水寒(みずさむ)くして馬骨(ばこつ)を傷(やぶ)る
往(ゆ)きて長城(ちょうじょう)の吏(り)に謂(い)う
「慎(つつし)んで太原(たいげん)の卒(そつ)を稽留(けいりゅう)するなかれ」
「官作(かんさく) 自(おのず)ずから程有(ほどあ)り、
築(ちく)を挙(あ)げ汝(なんじ)が声(こえ)を諧(かな)えよ」
「男児(だんじ)寧(むし)ろ当(まさ)に格闘(かくとう)して死(し)すべし
何(なん)ぞ能(よ)く怫鬱(ふつうつ)として長城(ちょうじょう)を築(きず)かんや」
長城(ちょうじょう) 何(なん)ぞ連連(れんれん)たる
連連(れんれん)として三千里(さんぜんり)
辺城(へんじょう) 健少(けんしょう)多(おお)く
内舎(ないしゃ) 寡婦(かふ)多(おお)し

現代語訳

馬に長城の泉の水を飲ませると、
その水の寒さに馬の骨も凍えるようだ。

工事人夫は長城の工事監督の役人のところに行ってお願いする。
「私たち太原から来た者を期日どおり戻してください」

役人「お上には日程というものがあるのだ。
声を揃えて築城の仕事に精を出せ!」

人夫「男児たるもの、戦で死ぬべきだ。
どうしてウツウツとして長城など築かないといけないのか」

長城はどこまでもはてしなく続き、三千里の長きに及んでいる。

この辺境の地に駆り出される若者は多く、郷里の留守宅にはやもめが多い。

解説

陳淋(?-217)字は孔璋。建安七子の1人。はじめ大将軍何進に仕え、後に袁紹に仕えます。

官渡の戦い(200年)では袁紹が全国に打倒曹操を呼びかけた檄文を代筆します。

袁紹が負けた後、曹操の前に引っ立てられた陳淋は、そこで曹操に命じられて問題の檄文を読みます。

それは曹操本人のみならず、曹操の一族までクソボロに罵倒する内容でした。
(ちょっと訳を読めばわかりますが、ほんともうクソボロです。気持いいくらいです)

曹操は陳淋のすぐれた文章力を誉め、以後自分の配下に置いたということです。

曹操、陳淋 双方の男気が感じられる、気持のいい逸話だと思います。

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朗読:左大臣光永

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