秋怨 魚玄機

▼音声が再生されます▼

秋怨 魚玄機
自歎多情是足愁
況當風月滿庭秋
洞房偏與更聲近
夜夜燈前欲白頭

秋怨(しゅうえん) 魚玄機(ぎょげんき)
自(みずか)ら歎(たん)ず多情(たじょう)は是(こ)れ足愁(そくしゅう)なるを
況(いわ)んや風月(ふうげつ)庭(にわ)に満(み)つる秋(あき)に当(あた)るをや
洞房(どうぼう)偏(ひと)えに更聲(こうせい)と近(ちか)し
夜夜燈前(よよとうぜん)白頭(はくとう)ならんと欲(ほっ)す

語句

■秋の夜の女性の深い思い。 ■多情 夫を思う気持でいっぱいであること。 ■足愁 悲しみばかりであること。多情と同じ。 ■況 ましてや。 ■洞房 女性の寝室。閨。 ■偏 なんと。いやなことに。 ■更聲 更は時間の単位。夜の時間を五分して一更から五更とする。一更ごとに太鼓を打って時を知らせた。怨み深い夜がなかなか明けないことを実感させられるわけである。 ■白頭 白髪頭。

現代語訳

秋の怨み深い気持
つくづくため息が出る。夫を思う気持が多いことは、悲しみもそれだけ多いのだと。
まして風や月の光が庭に満ちる秋には、いよいよ愁いも深くなる。
その上よりによって私の寝室は夜の時刻を告げる鐘の音が間近に聞こえてくる。
毎夜、灯りの下で悩むあまり白髪頭になってしまいそうだ。

……

秋の夜を夫を思って悶々とすごす女性の気持。右大将通綱母の「嘆きつつ一人寝る夜の明くる間はいかに久しきものとかは知る」に通じるテーマです。

朗読:左大臣