田家の春望 高適(でんかのしゅんぼう こうせき)

■【中国語つき】漢詩の朗読を聴く
■【古典・歴史】メールマガジン
■【古典・歴史】YOUTUBEチャンネル

▼音声が再生されます▼

田家春望 高適
出門何所見
春色満平蕪
可嘆無知己
高陽一酒徒

田家(でんか)の春望(しゅんぼう) 高適(こうせき)
門(もん)を出(い)でて何(なん)の見(み)る所(ところ)ぞ
春色(しゅんしょく) 平蕪(へいぶ)に満(み)つ
歎(たん)ず可(べ)し 知己(ちき)無きを
高陽(こうよう)の一酒徒(いちしゅと)

現代語訳

門を出ても何ひとつ見るべきものはない。
野原に春が色めいているだけだ。

嘆かわしいのは俺を理解する者がいないことだ。
高陽の一酒徒たる、この俺を!

語句

■田家 田舎。 ■春望 春の眺め。(杜甫の「春望」は有名。 ■平蕪 広々した平原。 ■知己 自分を理解してくれる人。 ■高陽の一酒徒 『史記』酈生伝(れきせいでん)に見える酈食其(れきいき)の故事から。以下解説

解説

理解者のいないことを嘆いてる詩です。ちょっとヤケクソ気味ですかね。

【高陽の一酒徒】は『史記』酈生伝(れきせいでん)に見える酈食其(れきいき)の故事から。

劉邦に仕えた酈食其(れきいき)は最初自分を売り込みに参った時、その身なりから「儒者に用は無い」と追い返されそうになりました。

酈食其は怒って、「俺は儒者ではない。高陽の一酒徒(酒飲み)だ」怒鳴ります。劉邦はこの言葉を気に入って酈食其を用いたという話です。(「高陽」は河北省保定県の東南。酈食其の故郷)

高適(702?-765)。字は達夫。渤海(現河北省)の人。安史の乱がきっかけで昇進するまではヤクザ者と交わったり辺境の地をさまよったり、…いろいろあったようです。代表作「除夜作」。

次の漢詩「楓橋夜泊 張継

朗読:左大臣光永

■【中国語つき】漢詩の朗読を聴く
■【古典・歴史】メールマガジン
【古典・歴史】YOUTUBEチャンネル