山居秋暝 王維

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山居秋暝 王維
空山新雨後
天氣晩來秋
明月松閒照
清泉石上流
竹喧歸浣女
蓮動下漁舟
隨意春芳歇
王孫自可留

山居秋暝(さんきょしゅうめい) 王維
空山新雨(くうざんしんう)の後(のち)
天気晩来(てんきばんらい)秋なり
明月松閒(めいげつしょうかん)に照(て)り
清泉石上(せいせんせきじょう)に流る
竹喧(たけさわが)しくして浣女(かんじょ)帰り
蓮(はす)動いて漁舟(ぎょしゅう)下る
隨意(ずいい)なり春芳(しゅんぽう)の歇(や)むこと
王孫(おうそん)自(みずか)ら留(とど)まるべし

現代語訳

人気のない山の雨上がり、
空気が澄み渡り、夕暮れ時、秋の気配が漂ってきた。
名月は松の間に照り、
清らかな泉が石の上を流れている。
竹林のむこうが騒がしいのは、洗濯女たちが帰っていくのだ。
蓮がさわさわ揺れるのは、釣船が川を下っていくのだ。
春の花は勝手に散ってしまえばよい(こんなに秋の風情がよいのだから)。
詩に言う。王孫は春の草花を愛でてその地に留まったと。
しかし若旦那たる私は、春の草花など関係なく、留まるだろう。

語句

■秋暝 秋の夕暮れ。 ■空山 人のいない山。 ■新雨 雨上がり。 ■天気 すみわたった空気。 ■晩来 夕暮れ時。 ■浣女 洗濯女。春秋時代の伝説的な美女、西施のイメージ。 ■春芳 春の花。 ■王孫 若旦那。王維自身をさす。『楚辞』招隠士「王孫遊んで帰らず、春草生じて萋萋たり」をふまえる。

……

王維が長安郊外に所有していた別荘「輞川荘」の秋の風情を詠んだ歌。

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朗読:左大臣光永