侍郎叔に陪して洞庭に遊ぶ酔後 三首 李白

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陪侍郎叔遊洞庭酔後三首 李白

其一
今日竹林宴
我家賢侍郎
三杯容小阮
醉後發清狂

其二
船上齊橈樂
湖心泛月歸
白鷗閑不去
爭拂酒筵飛

其三
剗卻君山好
平鋪湘水流
巴陵無限酒
醉殺洞庭秋

侍郎叔(じろうしゅく)に陪(ばい)して洞庭(どうてい)に遊ぶ酔後(すいご) 李白

其一
今日(こんにち)竹林(ちくりん)の宴(えん)
我家の賢侍郎(けんじろう)
三杯にて小阮(しょうがん)を容(よう)し
醉(よ)うて後(のち) 發(つまび)きて清狂(せいきょう)す

其二
船上(せんじょう)に橈(かい)を斉(そろ)えて楽しむ
湖心(こしん)に月を泛(うか)べて帰る
白鷗(はくおう)閑(かん)として去らず
争(いか)で払(はら)はん酒筵(しゅえん)に飛ぶを

其三
剗卻(さんきゃく)すれば君山(くんざん)の好(よろ)しく
湘水(しょうすい)を平鋪(へいほ)して流れしめん
巴陵(はりょう) 無限の酒
醉殺(すいさつ)す洞庭(どうてい)の秋

現代語訳

刑部侍郎を務める叔父のお伴をして洞庭湖に遊んで、酔った後に 李白

その一
今日、竹林で宴を開いた
わが家の刑部侍郎さま(叔父の李嘩)は、
三杯飲んで琵琶を抱え、
酔ってのびのびと、かき鳴らした。

船の上に櫂を揃えて酒宴を楽しむ。
湖の上に月が浮かぶのを眺めて帰ってきた。
白いカモメが寂しげに留まって飛び去らない。
酒の席に飛んでいるものを、どうして追っ払うことができよう。

君山を削り取って平らにすれば、
湘江の水も平らになって、ゆうゆうと流れることだろう。
巴陵には無限の酒がある。
洞庭の秋に、酔いしれよう。

語句

■陪 目上の人のお伴をすること。 ■侍郎叔 刑部侍郎(法務省次官)の職にあった叔父の李嘩(りよう)。嶺南(広東・広西)に左遷される途中、洞庭湖で李白と会った。 ■侍郎 謁見の取次役。 ■小阮 竹林の七賢の一人・阮咸(げんかん)。4弦の撥弦楽器をよく弾いたと言われ、その楽器も「阮咸」と呼ばれる。 ■容 持つ。かかえる。 ■發 撥弦楽器を弾いた。 ■清狂 のびのびとふるまうこと。

■橈 船の櫂。 ■筵 むしろ。座席。 ■白鷗 白い鴎。

■剗卻 削り取る。 ■君山 洞庭湖の中島。 ■洞庭 洞庭湖。長江流域。湖南省北東部の大きな淡水湖。  ■湘水 洞庭湖から南に流れる大河・湘江。 ■平鋪 平らに敷きならす。 ■巴陵 洞庭湖の東北。湖南省岳陽地区。 ■醉殺 酔いつぶれる。

解説

李白が、刑部侍郎(法務省次官)の職にあった叔父の李嘩(りよう)を送別して、洞庭湖で遊んだ時の詩です。洞庭湖は湖南省にある大きな湖で長江流域にあります。古来数々の詩に詠まれています。

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