李白「江夏にて宋子悌に別る」

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江夏別宋子悌 李白
楚水清若空
遥将碧海通
人分千里外
興在一盃中
谷鳥吟晴日
江猿嘯晩風
平生不下涙
於此泣無窮

江夏にて宋子悌と別る 李白
楚水 清きこと空しきが若(ごと)く
遥かに碧海(へきかい)に通ず
人は千里の外(そと)に分かれ
興は一盃の中(うち)に在り
谷鳥(こくちょう) 晴日(せいじつ)に吟(ぎん)じ
江猿(こうえん) 晩風(ばんぷう)に嘯(うそぶ)く
平生(へいせい) 涙下さざるが
此(ここ)に於(お)いて泣くこと窮まり無し

現代語訳

江夏にて宋子悌と別れる 李白
楚の国を貫いて流れる長江は、澄みわたり、まるで水が無いようだ。
遥かに紺碧の海まで通じている。

人は千里の外に別れ、
別れの情は、この一杯の盃の中にある。

谷の鳥は晴れた日にさえずり、
川岸の猿は夕暮れ時の風に鳴きしきっている。

いつもは涙など流さない私が、
ここに至って極まりなく泣いているのだ。

語句

■江夏 湖北省武漢市武昌。 ■宋子悌 初唐の詩人宋子問の末弟。この詩は宋子悌がベトナム方面に赴任してく際、李白が江夏にて餞別として贈った詩といわれる。 ■楚水 楚の国を流れる長江。

解説

詩の形式は五言律詩です。江夏は現在の湖北省武漢市武昌。ここで李白はベトナム方面に赴任していく宋子悌を見送るのです。楚水は楚の国を貫いて流れる長江。谷の鳥、川岸の猿の声が耳に響き印象深い詩です。

現代語訳

はるばると旅をして、荊門の東まで来て、
楚の国を旅するのだ。

山は平野があらわれるにしたがって無くなり、
長江は果てしない平野の中を流れていく。

満月は傾くのは、天を鏡が飛んでいくように見える。
雲が起こるのは、蜃気楼があらわれたように見える。

それでもなお、しみじみ懐かしく思うのだ。
わが故郷・蜀から流れ出した長江の水が、
万里のかなたまで、行く船を送るのを。

語句

■荊門 長江の南岸、宜都(湖北省枝城市)の西北にある山で、蜀と湖北・湖南地方との境目。 ■渡遠 故郷の蜀の国を出て、はるばる荊門の外(東)まで旅をしているという実感。李白25歳くらいのこと。 ■大荒 果てしない空間。湖北・湖南の平野を指す。 ■天鏡 空を移動する月を鏡とたとえた。 ■海楼 蜃気楼。

解説

詩の形式は五言律詩です。李白は25歳頃、故郷の蜀を後にして、諸国漫遊の旅に出ます。長江を下り、はるかな旅に出たんです。荊門は長江の南岸、宜都(湖北省枝城市)の西北にある山で、蜀と湖北・湖南地方との境目です。いよいよ故郷を遠く離れたという実感があったことでしょう。はるばる来ぬる旅をしぞ思ふの、わが国の在原業平の感慨が、読み取れる詩です。

現代語訳

山は青々と街の北側に横たわっている、
川は白くキラキラと街の東側を取り囲むように流れている。

いったんこの地に別れを告げれば、君は風に舞う蓬のように万里の彼方へ 旅立ってしまうのだ。

流れる雲は旅立つ君の心、
沈む夕陽は見送る私の気持ち、そのものだ。

二人手を振って別れると、 馬が寂しそうにいなないた。

語句

■青山 「墓」のことを指すこともあるが、ここでは「青々とした山」。 ■北郭 街の北。■白水 川の水面がキラキラと輝いているさま。■東城 街の東側。 ■孤蓬 風に舞う蓬。■遊子 旅人。ここでは見送られる側の友人。 ■故人 友人。ここでは見送る側の自分。■揮手 別れに際して手をふる動作。 ■茲 ここ。この場所。 ■肅肅 悲しいかんじ。■班馬 群れを離れた馬。「班」は別れる、離れる。

解説

李白は絶句(四句の詩)を得意とし、
後世の評価も絶句において高いです。

一方、李白の律詩(八句の詩)といって
すぐに挙げられる方は少ないのではないでしょうか。

「友人を送る」は、李白の律詩の代表的なものです。

見送った相手や場所はわかっていません。寂しげな馬のいななきが耳に残る詩です。

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朗読:左大臣光永

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