「歳月人を待たず」(「雑詩」) 陶淵明

人生無根蒂
飄如陌上塵
分散逐風轉
此已非常身
落地爲兄弟
何必骨肉親
得歡當作樂
斗酒聚比鄰
盛年不重來
一日難再晨
及時當勉勵
歳月不待人

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人生は根蒂無く
飄として陌上の塵の如し
分散し風を追って転じ
此れ已に常の身に非ず
地に落ちて兄弟と為る
何ぞ必ずしも骨肉の親のみならん
歓を得ては当に楽しみを作すべし
斗酒 比隣(ひりん)を聚(あつ)む
盛年 重ねて来たらず
一日 再び晨(あした)なり難し
時に及んで当に勉励すべし
歳月 人を待たず

現代語訳

人生には木の根や果実のヘタのような、
しっかりした拠り所が無い。

まるであてもなく舞い上がる
路上の塵のようなものだ。

風のまにまに吹き散らされて、
もとの身を保つこともおぼつかない。

そんな人生だ。みんな兄弟のようなもの。
骨肉にのみこだわる必要はないのだ。

嬉しい時は大いに楽しみ騒ごう。
酒をたっぷり用意して、近所の仲間と飲みまくるのだ。

血気盛んな時期は、二度とは戻ってこないのだぞ。
一日に二度目の朝はないのだ。

楽しめる時はトコトン楽しもう!
歳月は人を待ってはくれないのだから!!

解説

「雑詩」は「思いのままに書き綴った詩」の意味。全十二詩の中の二詩目です。

時に及んで当に勉励すべし 歳月人を待たず」ここが、日本ではずっと「過ぎた時間は二度ともどってこないんだから一生懸命勉強しなさい」というツマンナイ意味にとられてきました。

確かにこの部分だけ取れば「勉励すべし=努め励め」と取れますが、詩全体の文脈を見ると、「何に努め励むのか?」ハッキリしてます。

酒を飲んで、おおいに楽しむことに「努め励め」とすすめているのです。

こういう、一部分だけを取り出して変な解釈をこじつけることを【断章取義】といいます。

このアホな解釈をした人は、詩全体を読んだことがないか、それとも読みはしたが自分が言いたいことを通すため、意図的に解釈をねじまげたか、どっちかでしょう。

【根蒂】 こんてい。木の根や果実のヘタ。つなぎとめておくもの。
【飄】 風に吹き飛ばされる感じ。
【陌上】 路上。

【分散】 散り分かれること。 【逐風轉】風に乗って吹き散らかされること。
【此已非常身】 もはや元の形をとどめていない。

【落地爲兄弟】 この世に生まれ落ちたものは、みな兄弟みたいなもの。

【何必骨肉親】 【何】は「どうして~だろうか」反語。
どうして血を分けた肉親にのみこだわる必要があろうか。

【得歡當作樂】 【當】は当然。
嬉しいことがあれば楽しみまくるべきだ。当然のことだ。

【斗酒】 一斗の酒。「大量の酒」というほどの意味。
杜甫「飲中八仙歌(李白一斗詩百篇)」参照。

【聚】 集める。【比鄰】 隣近所。
【盛年】 若い時。青春。 
【晨】 朝。陶淵明「帰去来の辞」に「恨晨光之熹微」。

【及時】 ちょうどよい時に。 【勉勵】 楽しみまくること。

朗読:左大臣

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