蒙古来 頼山陽

本日は頼山陽の詩「蒙古来(蒙古来る)」です。鎌倉時代のモンゴル襲来(元寇)のことを歌っています。

蒙古来 頼山陽

筑海颶氣連天黑 
蔽海而來者何賊 
蒙古來 來自北 
東西次第期呑食 
嚇得趙家老寡婦 
持此來擬男兒國 
相模太郞膽如甕 
防海將士人各力 
蒙古來 吾不怖 
吾怖關東令如山 
直前斫賊不許顧 
倒吾檣 登虜艦 
擒虜將 吾軍喊 
可恨東風一驅附大濤
不使羶血盡膏日本刀 

蒙古来たる 頼山陽

筑海(ちくかい)の 颶氣(ぐき)  天に連なりて 黑く
海を蔽(おお)ひて 來る者は 何(いか)なる賊ぞ
蒙古 來(きた)る  北 自(よ)り 來たる
東西 次第に  呑食(どんしょく)を 期す
嚇(おど)し得たり趙家(ちょうか)の  老寡婦(ろうかふ)を
此(こ)れを持(じ)し 來りて擬(ぎ)す  男兒(だんじ)の國(くに)に
相模太郞(さがみたろう)  膽(たん) 甕(かめ)の如(ごと)く
防海(ぼうかい)の將士(しょうし)  人(ひと) 各ゝ(おのおの) 力(つと)む
蒙古 來(きた)る  吾(われ)は 怖(おそ)れず
吾は怖る  關東の 令(れい) 山の如きを
直(ただ)に 前(すす)み 賊を斫(き)り  顧(かへりみ)るを許さず
吾が檣(ほばしら)を倒し  虜艦(りょかん)に登り
虜將(りょしゅう)を擒(とら)へて  吾が軍 喊(さけ)ぶ
恨む可(べ)し  東風(とうふう) 一驅(いっく)して大濤(だいとう)に附(ふ)し
羶血(せんけつ)をして  盡(ことごと)く 日本刀に 膏(ちぬら)しめざるを

【現代語訳】
筑紫の海では台風が天まで続くように黒々としている。
海をおおって来る者は何者だろう。
蒙古が来た。北から来た。

蒙古は東西の国々を征服しようとして、

衰えた南宋を脅して、
南宋の軍隊を先陣にして、やってきて武器を構える。この男児の国に。

相模太郎・北条時宗は、キモが甕のように座っているし、
海を守る武士たちは皆それぞれ、奮戦した。

蒙古が来た。だが私は恐れない。
私が恐れるのは、鎌倉幕府の山のようにゆるぎない権威だけだ。

すぐに進撃して賊を斬り、振り返ることは許さない。
わがほうの船の帆柱を倒して、敵の船に登り、
敵将を捕らえてわが軍は叫ぶ。

残念なことは、台風がざっと吹いてきて大波がおこったため、
夷狄の血を十分に日本刀に吸わせられなかったことだ。

【語句】
■筑海 筑紫の海。 ■颶氣 つむじ風。台風。ここでは二度の蒙古襲来にあたって吹いたという台風を指す。 ■東西 世界各国。 ■期呑食 蒙古が(世界の国々を)征服しようとして。 ■嚇得 おどした結果。 ■趙家老寡婦 「趙家」は南宋の王朝。「趙」は南宋の皇帝の姓。「老寡婦」は年老いた婦人で、衰えた南宋をしめす。 ■持此 この南宋の軍勢をもって。元が征服した南宋の軍勢をもって日本を攻めさせたことをいう。 ■來擬 日本に襲撃してきて武器を構えた=戦をしかけた。 ■相模太郞 北条時宗。 ■膽 きも。 ■如甕 カメのように腹がすわっていること。 ■防海將士 海の守りをする武士たち。 ■關東令 鎌倉幕府の命令・権威。 ■如山 山のように大きくゆるぎないこと。 ■一驅 ざっと。 ■大濤 大波。 ■羶血 夷狄の血。

……

かつてはこの国も、これほど気概があったんですね。

もちろんこれは詩ですし、歴史上の事実そのものとはいえません。

北条時宗は執権になったのが18歳、文永の役の時、24歳…若いですから、モンゴル襲来のとき、北条時宗が総司令官としてどれだけ有能であったのか?どれだけリーダーシップを発揮したのかというのは、当時の史料からは、ほとんど読み取れません。

「国難を救った救国の英雄、北条時宗」というのは、多分に後世つくられたイメージです。

しかし、それにしても、当時の鎌倉武士が、モンゴル軍を打ち払うために奮戦努力したことは事実です。

こうした多くの先人のはたらきによって、現在の日本が守られているのは軽いことではないと思います。

…どうしてこんなに情けない国になっちゃったんですかねぇ…

私は国家も、個人も、戦うべき局面では戦うべきだと思います。

国家も、個人も、戦うべき局面では戦うべきだと思います。

戦いとは、武力行使のことだけを言ってるんじゃないですよ。

相手があまりにも理不尽に押してくる。

これ以上は話し合いが成立しないという、

ギリギリの局面においては、

牙をむくことは必要です。

何でもかんでも理不尽が通るわけじゃないぞ、

あんまりナメてると大変な目にあうぞと、

何やっても許される、どんな理不尽もまかり通ると思っている相手に対して、

ちゃんと学習させるということです。

忠臣蔵ってそういう話じゃないですか。

ナメてると大変なことになるぞ。

人の尊厳を踏みにじって、のうのうと平和に暮らしてられると思うなよと、

どっかの隣の国が、

単なる売春婦を従軍慰安婦と言いかえて、

単なる労働者を徴用工と言い換えて、

金よこせ、金よこせ、金金金金と、ヨダレたらしてたかって来ている。

それに対して、違うと、

ちゃんと否定するってことですよ。

武力を用いることだけじゃないですよ。

法にのっとって、裁判で決着をつけるもそうですし、

相手の理不尽に対して、「やめてください」とハッキリ言う。

いらない商品は「いらない」とハッキリ言う。

そういうことです。

北条時宗はモンゴルの使者を斬りました。

断固として斬りました。

これについて歴史的評価は賛否両論ありますが…

私個人としては

「よくやった!!」と

絶賛したいです。

朗読:左大臣光永