絶句 杜甫(ぜっく とほ)
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遅日江山麗
春風花草香
泥融飛燕子
沙暖睡鴛鴦
江碧鳥逾白
山青花欲然
今春看又過
何日是帰年
遅日 江山麗し
春風 花草香ばし
泥融けて 燕子飛び
沙(すな)暖かにして鴛鴦(えんおう)睡る
江碧にして鳥いよいよ白く、
山青くして花燃えんと欲す。
今春みすみすまた過ぐ、
何れの日にか是帰年ならん。
現代語訳
春のうららかな日は江も山も美しく、
春風が吹いて草花のよい香りが漂う
泥は溶けて燕が飛び、
砂は暖かく、オシドリが眠っている。
河は深緑に輝き鳥の白さがいっそうそこに引き立ち、
山の青さに映えて花は燃えるように真っ赤だ。
今年の春も見る間に過ぎてしまった。
いつになったら故郷に戻れる時が来るのだろう。
解説
「春望」と並んで杜甫の代表作。杜甫は安史の乱を避けて故郷の洛陽を離れます。成都(四川省)郊外に草堂をきずき家族とともに安住します(この庵は現在記念館になっています)。
763年、8年間にわたった安史の乱が終結します。しかしすぐに洛陽に戻るというわけにはいきませんでした。
洛陽は安史の乱とそれに続く大小の反乱によって略奪されまくっており、もはや都市としての機能を失っていました。
また、蜀から洛陽までの道のりには盗賊や軍閥がひしめき、家族を連れて移動するなど、とてもかなわないことだったのです。
杜甫は異国の地・成都にとどまるほかはありませんでした。
「絶句」は詩の形式のことであり、特別に題はありません。
【碧】【白】【青】【赤】と、強烈な色彩のコントラストで南方らしい原色系の風景を描き出します。
だから明るく晴れ晴れした詩かと思いきや、そんな綺麗な景色だけども、私の故郷とは違う、ここは異国だ。ああ、いつになったら戻れるのか…という話です。
【看】(みすみす)の一字がきいています。「見ているうちに」「あれよあれよという間に」春は過ぎ去ってしまう。その、もどかしさというか、忸怩たる思い。
【欲】は、「~しようとしている」。杜甫「春望」に「渾欲不勝簪(渾べて簪に勝えざらんと欲す)」とあります。
松尾芭蕉『奥の細道』「千住」の章に見える、「行く春や鳥啼き魚の目は泪」の句は、杜甫のこの詩に通じる情緒を感じます。芭蕉のほうはずっと気楽ですが。
『奥の細道』千住
↑こちらで朗読しています。
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