雑詩 曹丕(ざっし そうひ)

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雑詩 曹丕
西北有浮雲
亭亭如車蓋
惜哉時不遇
適與飄風會
吹我東南行
行行至呉會
呉會非我郷
安得久留滯
棄置勿複陳
客子常畏人

雑詩(ざっし) 曹丕(そうひ)
西北(せいほく)に浮雲(ふうん)あり
亭々(ていてい)として車蓋(しゃがい)の如(ごと)し
惜(お)しい哉(かな) 時(とき)に遇(あ)わず
適適(たまたま) 飄風(ひょうふう)に会(あ)う
我(われ)を吹(ふ)きて東南(とうなん)に行(ゆ)かしめ
行(ゆ)き行(ゆ)きて呉会(ごかい)に至(いた)る
呉会(ごかい)は我(わ)が郷(きょう)にあらず
安(いずく)んぞ久(ひさ)しく留滞(りゅうたい)するを得(え)ん
棄置(きち)してまた陳(の)ぶること勿(なか)らん
客子(かくし)は常(つね)に人(ひと)を畏(おそ)る

現代語訳

西北に浮雲が漂っている。
高々として、まるで車の蓋いのようだ。

惜しいことに時が悪く、たまたま吹き起こったつむじ風に
吹き飛ばされてしまう。

私も浮雲のように東南に吹き流されて旅を続けるうち、
とうとう呉・会稽の地まで来てしまった。

呉・会稽は私の故郷ではない。どうして長居できようか。

ええい、何のかのと言っておられるか。
どうせ旅先では人は信じられないのだ。

語句

■亭亭 高くそびえているさま。 ■車蓋 車の蓋い。 ■時不遇 時が悪い。幸運にめぐりあわせなかった。 ■適與 適与。たまたま。 ■飄風 つむじ風。 ■呉會 呉会。呉郡と会稽郡。現江蘇・浙江一帯。 ■安 いずくんぞ。どうして~できようか。 ■留滯 滞在。 ■棄置勿複陳 ええい、何のかのと言っておられるか。慣用句。 ■客子 旅人。よそ者。

解説

曹丕(187-226)字は子桓。曹操の長男。220年、曹操が逝去した跡を継ぎ、魏王となります。次いで後漢の献帝を禅譲(位を譲ること)させ、初代魏王朝皇帝となり、文帝と名乗ります。

魏は今まであくまでも「漢王朝の中の」強国だったのが、曹丕の代で「魏王朝」になったわけです。

まあ、魏はすぐに臣下の司馬一族に乗っ取られてしまうわけですが。

曹丕は父の曹操、弟の曹植とならび「三曹」と称され、詩作に才がありました。226年、肺病のため亡くなりました。

父の跡を継いで魏王になる際には弟の曹植と激しい後継者争いがあったとかなかったとか(曹植「七歩の詩」参照)。

この詩は曹操が曹植を太子にたてようとした際の焦りを表しているとも言われます。

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朗読:左大臣光永

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