夜、隣家の唱うを聴く 梅堯臣(よる りんかのうたうをきく ばいぎょうしん)

夜聴鄰家唱
夜中未成寐
鄰歌聞所稀
想像朱唇動
髣髴梁塵飛
誤節応偸笑
窃聴起披衣
披衣曲已終
窗月存余暉

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夜、隣家の唱うを聴く
夜中 未だ寐りを成さず
隣の歌は聞くに稀(かす)かなる所あり
朱唇の動くを想像し
梁塵の飛ぶに髣髴(ほうふつ)たり
節を誤って応に偸(ひそ)かに笑うなるべし
窃かに聞かんと 起って衣を披(はお)る
衣を披りしとき 曲已(すで)に終り
窓月 余暉を存す

現代語訳

夜眠つけずにいると、隣の家から微かな歌声が聴こえてくる。
歌っている赤い唇が動くのを想像する。
さながら梁の塵が吹き飛ぶほどのすばらしい歌声だ。

歌い間違ってクスクス笑っているようだ。
密かに聞こうと起き上がって衣を羽織る。

衣を羽織った時はもう曲は終わっており、
窓から見える月が微かな光を残していた。

解説

たまらない雰囲気です。特に歌い間違ってクスクス笑ってるとこなんか大好きです。

李白「春夜洛城に笛を聞く」と比較してみてください。同じく「夜に音が聞こえてくる」という主題ですが、あくまで華麗な李白の詩と、ちょっと日常性というか、人間くささをただよわせる梅堯臣。作家性の違いが出ています。

【未成寐】 いまだ寝付けない。 【朱唇】 赤い唇。

【梁塵】 魯の虞公(ぐこう)が歌うと、あまりの素晴らしさに
梁の塵がうごめいたという故事による。

【髣髴】 ~を思わせる。 さながら。
頼山陽「天草洋に泊る」に「水天髣髴青一髪」と。

【窗月】 窓から見える月。 【余暉】 微かな光りを残している。

梅堯臣(1002-1060)。字は聖兪。宣州宛陵(安徽省宣城市)の人。欧陽脩との交流、また門下から蘇軾王安石を出したことで知られます。

詩風は「平淡」を旨としました。これは晩唐からはじまった西崑体の表現の華麗さを追うのと反対の流れです。派手な演出はしない、ということです。

とかミミズとか、身の回りの地味な題材を扱ったのも新しいことでした。その地味さゆえか日本ではあまり人気の無い詩人ですが、このノンビリ感、ぼくは大好きです。

猫を祭る」は特にほほえましいです。死んだ愛猫を悼んだ詩です。ペット愛好家には共感できるはずです。

「梁の塵が飛ぶ」というのは、魯国の虞公という人が歌を歌うと、あまりの素晴らしさに梁の塵がうごめいた、という故事によります。

「遊びをせんとや生れけむ」の歌で知られる後白河法皇の「梁塵秘抄」の出典にもなってる故事ですね。

そのほか、いい感じに【夜】を詠んだ詩 ≫
李白「春夜洛城に笛を聞く」陸機「赴洛道中作」

朗読:左大臣

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