登楼 杜甫

登楼 杜甫
花近高樓傷客心
萬方多難此登臨
錦江春色來天地
玉壘浮雲變古今
北極朝廷終不改
西山寇盜莫相侵
可憐後主還祠廟
日暮聊爲梁甫吟

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登楼 杜甫
花は高楼に近くして客心(かくしん)を傷(いた)ましむ
万方(ばんぽう)多難 此(ここ)に登臨(とうりん)す
錦江の春色 天地に来り
玉塁(ぎょくるい)の浮雲(ふうん) 古今(ここん)に変ず
北極の朝廷 終(つい)に改めず
西山(せいざん)の寇盗(こうとう) 相侵(あいおか)すこと莫(な)かれ
憐れむべし 後主も還(また)廟に祠らる
日暮(じつぼ)聊(いささ)か為す 梁甫吟

現代語訳

花は高楼の近くに咲き旅心をかき乱す。
あちらもこちらも多難であるなか、
私はこの地で高楼に登り、四方を臨むのだ。

錦江の張るの景色は天地に満ち、
玉塁山の浮雲は今も昔も変化し続けている。

北極星のように不動のわが朝廷は、
どんなに攻撃を受けてもついにゆるがない。
西山の盗賊よ、わが国を侵略するな。

なんとまあ、蜀の劉禅も蜀の国は滅ぼされたのに、
廟に祀られているではないか。

それは、諸葛亮という忠臣がいたからだ。
この夕暮れ、私は口ずさんでみる。
諸葛亮の愛唱した「梁甫吟」を。

語句

■客心 旅心。 ■万方 あらゆる方面。どこもかしこも。 ■登臨 高い所に登ってながめる。 ■錦江 成都を流れる川。蜀で生産された錦をさらした。 ■春色 春景色。 ■玉塁 成都の西北の山。吐蕃との国境。敵の侵入がたびただあった。 ■北極朝廷 北極星のように不動のわが朝廷。 ■西山 成都の西北の雪嶺。吐蕃(現・チベット)に通じる路。 ■寇盗 泥棒。 ■可憐 なんとまあ。 ■後主 蜀の劉禅。劉備の子。魏に滅ぼされた。 ■日暮 夕暮れ。 ■梁甫吟 孔明が愛唱したという歌。斉の名宰相の晏子について歌ったもの。

解説

広徳元年(764年)、杜甫53歳の作。この前年、吐藩(チベット)が長安を占領しました。皇帝代宗は難を逃れ、長安は将軍郭子儀(かくしぎ)によって奪還されました。杜甫はこの話を成都でききました。国難に際して、杜甫の愛国心は奮い立ちます。

蜀の劉禅は国を魏に奪われた。それでも現在、廟に祀られている。それは諸葛亮のような忠臣がいたからだ。自分も唐王朝における諸葛亮たらんと、そこまで思っていたかわかりませんが、杜甫が心底唐王朝を、中国の国土を愛していることが伝わってきます。

「梁甫吟」は諸葛亮孔明がまだ劉備と出会う前に愛唱していた詩です。斉の名宰相の晏子について歌っています。諸葛亮は梁甫吟を口ずさみながら、自分もいつか晏子のように国難を救う者たらんと思ったことでしょう。

そして孔明の時代から5世紀を隔てて、杜甫は唐王朝の国難を救う、現在の孔明たりたいと、熱い血をたぎらせているのです。

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