登高 杜甫(とうこう とほ)

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風急天高猿嘯哀
渚清沙白鳥飛廻
無邊落木蕭蕭下
不盡長江滾滾來
萬里悲秋常作客
百年多病獨登臺
艱難苦恨繁霜鬢
潦倒新停濁酒杯

風急に天高くして 猿嘯哀し
渚清く 沙白くして 鳥飛び廻る
無辺の落木 蕭蕭として下り
不尽の長江 滾滾として来る
万里悲秋 常に客となり
百年多病 独り台に登る
艱難 苦(はなは)だ恨む 繁霜の鬢
潦倒(ろうとう) 新たに停む 濁酒の杯

現代語訳

風は激しく吹き、天は抜けるように高く、猿の声が悲しげに響く。
渚は清らかで 砂は白く 鳥が飛び廻っている。

落ち葉は際限もなく悲しげに散り落ち
尽きることのない長江の流れはこんこんと迫ってくる。

故郷を去って万里、毎年秋を悲しい旅人の身で迎える。
体は長年、病を患っている。そんな身で独り、台に登るのだ。

長年の苦労で、恨めしいことに鬢の毛はすっかり白くなってしまった。
落ちぶれ果てたこの身に追い討ちをかけるように、好きだった酒さえ 禁じられてしまった。

解説

杜甫57歳の時の作。「登岳陽楼」「江南にて李亀年に逢う」と並び、杜甫晩年の悲愁を歌った詩。

4聯すべてが見事な対句をなした、完璧な七言律詩です。

晩年の杜甫の身を裂かれるような孤独が伝わってきます。ここまで深い孤独を歌った詩は古今に珍しいと思います。

もう李白も世を去り、昔を語らう友は少なかったようです。

【登高】は九月九日の重陽の節句には高台に上って菊酒を飲んで邪気払いをする習慣のこと。王維「九月九日山東の兄弟を憶う」も、この習慣についての詩です。

【猿嘯】 サルの鳴き声。李白「早発白帝城」参照「両岸猿声啼不住」

【無辺】 果てしない。 【落木】 落葉。
【蕭蕭】 さびしげな様子。 【滾滾】 こんこん。水が流れ続ける様子。

【客】 旅人。 【艱難】 苦労。
【繁霜鬢】 霜のように白くなった鬢。

【潦倒】 ろうとう。老いぼれ。落ちぶれたさま。
【濁酒】 濁り酒。どぶろく。
島崎藤村「千曲川旅情の歌」に「濁り酒濁れる飮みて」とあり。

朗読:左大臣

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