夢天(天を夢む) 李賀

老兎寒蟾泣天色
雲楼半開壁斜白
玉輪軋露湿団光
鸞珮相逢桂香陌
黄塵清水三山下
更変千年如走馬
遙望斉州九點煙
一泓海水杯中瀉

老兎 寒蟾(かんせん) 天色に泣き
雲楼 半ば開き 壁斜めに白し
玉輪 露に軋って 団光 うるおい
鸞珮(らんばい) 相逢う 桂香の陌(みち)
黄塵 清水(せいすい) 三山の下(もと)
更変すること千年 走馬の如し
遙かに望めば斉州 九点の煙
一泓の海水 杯中にそそぐ

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現代語訳

月にいるという老いた兎、寒々とした声を発するガマガエル、
その兎とガマガエルが涙を流しているように、雨が降りしきる。

雲の裂け目から楼台が現れたように月の光が差し、
壁を斜めに白く照らしている。

あたりの露をきしらせて走る玉輪のような月。
そこから発する一団の光はしめやかな光を放っている。

鸞珮を持った仙女とのキンモクセイの香りが漂う道で出会った。
下界を見下ろすと黄色い塵のたちこめる大地と青々とした海が見える。

ここでは千年があっという間に過ぎてしまう。
はるかに中国大陸を望むと九つの州はかすかな煙が
九箇所から上がっているようにしか見えない。

海の水も一杯の水を注いだような感じだった。

解説

夢天天を夢む)」は題名どおり、夢の中で天上世界を見た内容です。

李賀(791-817)。中唐の詩人。字は長吉。河南省福昌の人。韓愈(かんゆ)に詩才を認められるも27歳で不遇のうちに夭折しました。「鬼才」と称されます。

幻想的・神話的世界を描き、ほかの詩人とは明らかに一線を画した独特の世界観です。

李賀の詩はわからん、わからんとよく言われます。ぼくもよくわかりません。

でもこのグワーッと押し寄せる、イメージの奔流というか、極彩色のキチガイ的想念のほとばしりというか。
意味なんか考えず、イメージに身をゆだねるのがいいと思います。

李賀があと10年生きていたらどんな詩を作ってたんでしょう…。

朗読:左大臣