春日李白を憶う 杜甫(しゅんじつ りはくをおもう とほ)

春日憶李白 杜甫
白也詩無敵
飄然思不群
清新ユ開府
俊逸鮑参軍
渭北春天樹
江東日暮雲
何時一樽酒
重與細論文

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春日李白を憶う 杜甫
白や詩 敵無く
飄然として思ひ群ならず
清新 ユ開府
俊逸 鮑参軍
渭北 春天の樹
江東 日暮の雲
何(いづ)れの時か一樽の酒
重ねて與(とも)に細かに文を論ぜん

現代語訳

李白よ、あなたの詩は天下無双だ。
世間に流されず、あくまでわが道を行く。
他の誰にも真似はできない。

その詩の新鮮で活き活きしているのはユ信のようだし、
才能のあふれることは鮑照にも並ぶほどだ。

ここ渭水の北ではもう春めいて、
木々が茂ってきている。

あなたは江東で
日暮れの雲の下にいるのか。

またいつか酒樽を前に
細やかに文学論に興じたいものだ。

語句

■白也 白よ。呼びかけているのは親しみをあらわす。■飄然 世間に流されず、わが道を行くかんじ。マイペース。 ■ユ開府 北周の詩人ユ信(513-581)開府は官命。 ■鮑参軍 南朝宋の詩人鮑照(521-465)。臨海王の参軍だった。 ■清新 新鮮で活き活きしていること。 ■俊逸 才能がすぐれていること。 ■渭北 渭水の北。渭水は黄河の支流の1つ。長安の北を流れる。「渭城」は渭水に望む街。王維「送元二使安西」に「渭城朝雨潤輕塵」。 ■江東 長江の下流一帯。李白がいる。

解説

天宝5年(746年)杜甫35歳の作です。当時、杜甫は長安にあり、かつて交わりを持った先輩詩人李白のことを思い出して詠んでいるのです。

李白と杜甫の出会いは天宝3年(744年)、李白44歳、杜甫33歳の時。所は洛陽と伝えられます。当時李白は玄宗皇帝の宮廷を追われ、先が見えない状況でした。杜甫もまた試験に落第して将来に行き詰っていた時期です。

「詩仙」と「詩聖」の出会い。なんというドラマチックな歴史的瞬間でしょうか!これだけで映画が一本撮れそうです!

すぐに二人は意気投合し、2年ほど交友が続きます。高適をまじえて、山東地方を旅しました。やがて李白は江東に、杜甫は長安へ居を移し、それ以来二人が出会うことはありませんでした。

しかし李白と杜甫はお互いに深く尊敬しあったようです(でないと弐年も一緒に旅はしませんよね)、それをいくつかの詩に詠んでいます。ただし杜甫が李白について15首も詠んでいるのに対し、李白が杜甫を詠んだのは4首。しかもそのうち確かなのは2首のみという温度差はありますが…。

李白の「魯郡の東 石門にて杜二甫を送る」とあわせて、聴いてみてください。

ほかに「飲中八仙歌」の中で杜甫はユーモアいっぱいに李白の酒呑みっぷりを描いています。「李白一斗詩百篇」の言葉で有名です。

朗読:左大臣