春暁 孟浩然(しゅんぎょう もうこうねん)

春暁 孟浩然

春眠不覚暁
処処聞啼鳥
夜来風雨声
花落知多少

春眠暁を覚えず、
処処に啼鳥を聞く。
夜来風雨の声、
花落つること知んぬ多少ぞ。

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現代語訳

春の夜の眠りは心地よく、朝が来たのにも気づかなかった。
あちらでもこちらでも鳥が啼くのが聞こえる。

昨夜は一晩中、雨まじりの風が吹いていたが、
花はどれくらい散ってしまっただろうか。

解説

布団の中で花の散る心配をしているんです。
なんと世捨て人精神にあふれた詩でしょうか!

きっとこの人は「ああ昨日のうちに花見をしておけばよかった。
昨夜の雨でだいぶ散っちゃったかなあ」なんて考えつつ、
ぜったい仕事になんか行かずに昼過ぎまで寝てると思います。

毎日会社に行って、バリバリ仕事して、立派な社会人である。

そういう人間からは、なかなか出ない詩だと思います。

作者猛浩然は、40歳すぎて初めて任官活動 を
するも、科挙に合格せず、一生をぶらぶら過ごした人物です。

おそらくこの詩には、朝早くから役所に出勤して
あくせく働いて、ごくろうさん、という
半分世捨て人。半分ひがみ感覚が入っているのでは
ないでしょうか。

私はこの孟浩然「春暁」を思うとき、
教科書の香りを思い出しますね。

学生時代、学年が改まって新しい教科書を配布される。

その時にペラペラーとめくって、教科書の香りを
かぎませんでしたか?

では中国語でどうぞ。

春暁 孟浩然

春眠不覚暁
処処聞啼鳥
夜来風雨声
花落知多少

井伏鱒二の訳が有名です。

ハルノネザメノウツツデ聞ケバ
トリノナクネデ目ガサメマシタ
ヨルノアラシニ雨マジリ
散ッタ木ノ花イカホドバカリ
(井伏鱒二著「厄除け詩集」より)

百人一首の喜撰法師の歌は、「春暁」と
精神において近い気がします。

わが庵は 都の辰巳 しかぞ住む
世をうぢ山と人はいふなり
喜撰法師

(意味)
私の庵は都の東南の方角、宇治山にある。
こんなふうにノンビリ暮らしているよ。
それなのに世間の人は侘しい場所だなどと言うんだ。

半分仙人。半分ひがみが入った、
これぞ世捨て人精神という歌。孟浩然の「春暁」と
通じ合うものがあると思います。

作者 孟浩然

孟浩然(689-740)盛唐時代の代表的詩人。
字は浩然。襄州襄陽(湖北省襄陽市)の人。
青年時代は故郷の鹿門山に隠棲していました。

40歳ごろ長安に出て科挙を受験するも落第。郷里に戻ります。

一時張九齢の招きで任官するも、すぐに官職を辞します。
その後は江南地方を放浪して一生を終えました。

就職の面接を飲み会のために
すっぽかして任官の話をダメにしたり、
玄宗皇帝の前で不平不満を詩に詠んで呆れられ、
任官をフイにしたなど、ダメ人間ぶりを伝える逸話が
多いです。

背中にできものができて苦しんでいたところ、
友人の王昌齢が訪ねてきて喜んで飲み食いしているうちに、
容態が悪化して死んだといわれます。

生涯、出世には縁が無かったものの、
その詩才は高く評価されています。
王維・李白・張九齢らと交流がありました。

特に自然を歌った詩に名作が多いです。

王維と並んで「王孟」と並び称され、
また、中唐の韋応物、柳宗元と並び
「王孟韋柳(おうもういりゅう)」とも称されます。

洛陽にて袁拾遺を訪ふて遇はず

もう一篇、孟浩然の五言絶句を。

洛陽訪袁拾遺不遇

洛陽訪才子
江嶺作流人
聞説梅花早
何如此地春

洛陽にて袁拾遺を訪(と)ふて遇はず
洛陽に才子を訪(と)えば
江嶺(こうれい)に流人と作(な)る
聞くならく梅花早しと
此の地の春にいかんぞ

【現代語訳】
洛陽に才能あふれる友人袁を訪ねてくと、
江嶺に島流しになったという。
聞くところによると江嶺は気候が暖かく梅が開くのも早いと。
この洛陽の地に比べて、春はどんな感じなのだろう。

【語句】
■袁拾遺 「袁」は名前。「拾遺」は官職名「左拾遺」のこと。 ■才子 非凡な才能を持っている人物。 ■江嶺 「江」は長江。「嶺」は五嶺(大臾、始安、臨賀、桂陽、掲陽)。江西・江南地方。 ■

洛陽に、古い友人でしょうか?袁さんを訪ねていったんです。
すると、袁さんはまずいことやらかしちゃって、江嶺に
島流しになっていますよ。ええっ!

江嶺は現在の江西・湖南地方。「江」は長江のことです。
洛陽と比べ、だいぶ南なので、春の訪れがむこうは早いのです。
そっちでは梅の花ももう開いているでしょうかなあ。
洛陽と比べて、春の感じは、どうですか。という歌です。

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