磧中作 岑参(せきちゅうのさく しんじん)

こんにちは。左大臣光永です。土曜日の夜、しっとりお過ごしでしょうか?本日、池袋に行きますといつもの土曜日に増して人が多かったです。ナンダコリャと思ったら、お祭りでした。そんな季節なんですね。 居酒屋の軒先にテーブルを出して昼間っからワイワイ飲んでるのが楽しそうでした。

さて、

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本日は李白や杜甫と同時代を生きた、岑參の詩です。

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岑參は辺塞詩で知られます。辺塞詩。
すなわち、遠く都を離れた辺境の地で、
異民族との戦いに備え防衛にあたる、兵士たちの気持ちや生活を
詩に託したものです。岑參は安西節度使、安西北庭都護の書記官として
二度西域へ赴任した経験をもとに多くの優れた辺塞詩を作りました。

岑參の詩の中でも、教科書などに採りあげられ
もっとも有名なものが、「磧中の作」です。

磧中作 岑參
走馬西来欲到天
辞家見月両回円
今夜不知何処宿
平沙万里絶人煙

磧中の作 岑參
馬を走らせて西来 天に到らんと欲す
家を辞して月の両回 円(まどか)なるを見る
今夜 知らず 何れの処にか宿せん
平沙万里 人煙を絶つ

現代語訳

馬を走らせて西へ西へと進んでいくと、
このまま天までたどり着けそうに思えてくる。

家を出てから月が二回満ちるのを見た。
今夜はどこに泊まろうか。見当もつかない。

見渡す限りの砂漠で、人家の煙は一筋も見えない。

語句

■欲到天 中国の北西は少しずつ地面が高くなっていき、どこまでも続くのが、まるで天にたどり着くようだとたとえた。 ■磧 小石まじりの砂原。 ■月両回円 満月が二回来るのは、二か月経っていること。 ■平沙 まっ平らな砂漠。

解説

どこまでも続く、砂漠の気色が目に浮かぶ詩です。ひんやりとした砂漠の夜の空気も、伝わってくるじゃないですか。今夜泊まる所も無い、泊めてくれそうな民家も無い。旅人の心細さが、しみじみ伝わってきます。

傾向の近い詩をもう一遍。

玉関にて長安の李主簿に寄す

玉関寄長安李主簿 岑参
東去長安萬里餘
故人那惜一行書
玉關西望堪腸斷
況復明朝是歳除

玉関にて長安の李主簿に寄す 岑参
東 長安を去ること萬里餘(ばんりよ)
故人 那(なん)ぞ惜しむ 一行の書
玉關(ぎょっかん) 西望(せいぼう)すれば腸(はらわた)斷(た)つに堪(た)えたり
況(いわ)んや復(ま)た明朝(みょうちょう)は是(こ)れ歳除(さいじょ)なるをや

東の方長安を去って一万里余り。
わが友よ、なぜ一行の手紙を書くことを惜しむのか。
玉門関から西の方を望めば、腸が引き裂かれるようだ。
まして明日は大晦日なのだから。

遠い異国の地で、しかも西の西の果て玉門関で迎えた大晦日。その心細さ、長安に残してきた「故人」友人への想いが、しみじみと伝わってきます。

次は、逆に、西域に旅立っていく旅人を見送る立場からの詩です。

胡笳の歌 顔真卿が使して河隴(かろう)に赴(おもむ)くを送る

胡笳歌送顏眞卿使赴河隴 岑参

君不聞胡笳聲最悲
紫髯綠眼胡人吹
吹之一曲猶未了
愁殺樓蘭征戍兒
涼秋八月蕭關道
北風吹斷天山草
崑崙山南月欲斜
故人向月吹胡笳
胡笳怨兮將送君
秦山遙望隴山雲
邊城夜夜多愁夢
向月胡笳誰喜聞

胡笳の歌 顔真卿が使して河隴(かろう)に赴(おもむ)くを送る
岑参

君聞かずや、胡笳(こか1)の聲(こえ) 最も哀しきを。
紫髯(しぜん) 緑眼の故人吹く
之(これ)を吹くこと一曲 猶 未だ了らざるに、
愁殺す楼蘭征戍の児
涼秋八月 蕭關(しょうかん)の道
北風吹き断つ 天山の草
崑崙山南 月斜(ななめ)ならんと欲す。
胡人 月に向って胡笳を吹く
胡笳の怨 将(まさ)に君を送らんとす。
秦山(しんざん) 遥(はるか)に望む 隴山(ろうざん)の雲
邊城(へんじょう) 夜夜(やや) 愁夢多し。
月に向って胡笳 誰か聞くことを喜ばん

君は聞かないだろうか。
胡人(異民族)が吹く笛の音が切々と悲しく響くのを。
紫の髯、緑の眼の胡人が吹いているのだ。

これを一曲吹いて、まだ吹き終わらないうちに、
楼蘭の国境警備の兵士たちは、愁いで胸がいっぱいになる。

涼しい秋のさなかの八月、蕭關(しょうかん)の道では
北風が吹いて、天山の草を吹きちぎり、舞い上がらせる。

伝説にある崑崙山では月が斜めに傾こうとしている。
胡人は月に向かって笛を吹く。

私は今、胡人の笛のかなでる歌のうらみを歌って、
遠く河隴(かろう)に旅立っていく君を見送ることにしよう。

ここ長安から君が行く隴山(ろうざん)の雲を、
はるかに望むのだ。

辺境の町町では、夜毎、もの悲しい夢を見ることだろう。

月に向かって吹く胡人の笛の音を
誰が喜ばしく聞くだろう。愁いに満たされるので、
誰も喜ばしくは、思わない。

長安からはるか彼方の西域地方へ旅立っていく友人の
顔真卿を送った詩です。

岑参の詩は、遠い国境付近で駐屯する兵士たちの
気持ちが詠みこまれており、なんともわびしい、
しみじみ味わい深いものがあります。ぜひおすすめしたい詩人です。

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本日も左大臣光永がお話しました。ありがとうございます。ありがとうございました。

朗読:左大臣