王昭君 李白(おうしょうくん りはく)
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王昭君
昭君払玉鞍
上馬啼紅頬
今日漢宮人
明朝胡地妾
王昭君
昭君、玉鞍を払い、
馬に上って紅頬に泣く。
今日漢宮の人、
明朝胡地の妾。
現代語訳
王昭君は玉の鞍の露を払い、
馬に乗るとその紅い頬には涙が流れた。
今日は漢の王宮の人なのに、
明日の朝には匈奴の妾となってしまうのだ。
解説
王昭君は中国前漢の元帝(在位BC48-BC33)の時代に後宮に勤めていた美女。楊貴妃、西施、貂蝉とともに中国四大美女の一人とされます。
漢王朝は創設以来、北方の匈奴とたびたび衝突を繰り返していました。しかし漢の宣帝の時代に至り匈奴の国は権力争いにより国力が低下します。
そこで匈奴の王、呼韓邪単于(こかんやぜんう)は、漢王朝との結びつきを強めようと、漢の元帝のもと参内します。
その祝宴の席のさなか、呼韓邪単于は元帝に漢王朝と匈奴との末永い共存のために姻戚関係を結びましょうと持ちかけます。政略結婚です。元帝はこの話を呑みました。
とはいえ元帝は自分の後宮から美女を送り出すのは惜しくなってきました。それで後宮で最も醜い女性を選ぼうということになりました。
さて元帝の後宮には三千人の女性がいました。そんな大人数ですから、いちいち帝自身が顔を確認できないわけです。似顔絵をズラリと並べておいて、その中から夜毎のお相手を選ぶという形でした。
女性たちは帝に取り入りたいですから少しでも美女に描いてもらおうと似顔絵師の毛延寿に賄賂を贈っていました。
ところが王昭君は自分の美貌に絶対的な自信がありましたから、その賄賂を贈りませんでした。
「コケにされた」と感じた似顔絵師の毛延寿は、王昭君の顔をとても醜く描きます。
で、この醜い似顔絵が元帝の目にとまったわけです。おお、わが後宮にもこんな醜い女がいたのか!これなら匈奴にくれてやっても惜しくはない、一件落着だと。
王昭君は匈奴の地へ出発を前にして挨拶のため元帝に謁見します。王昭君を見た元帝は驚きます。すごい美人だったのです。
でも今さら前言撤回などできず、そんなことしては外交問題ですから、泣く泣く王昭君を送り出した…という話です。
この話は『西京雑記』に出ています。まあ、創作の要素が強いのでしょうが、「悲劇の美女」というわかりやすい題材は広く受け入れられ、さまざまな詩や演劇で王昭君の物語は繰り返し語られることになるのです。
【玉鞍】 【玉】はヒスイなどの高価な石。そういうもので作られた鞍。
【紅頬】 赤い頬。 【漢宮人】 漢の王宮の人。
【胡地】 異民族がすむ地域。 【妾】 めかけ。
漢王朝と匈奴の対立が生んだ歴史上のドラマといえば、王昭君の時代より1世紀ほどさかのぼりますが、武帝(在位BC141-BC87)の時代の李陵(?-BC74)と蘇武(?-BC60)が挙げられます。
対匈奴戦の司令官であった李陵は、生け捕りになったまま匈奴の地になじみ、二度と漢には戻りませんでした。
一方、同じく生け捕りになった蘇武は長い幽閉生活の後に再び漢の地に戻ります。
中島敦の『李陵』は、この李稜と蘇武、そして『史記』の作者司馬遷の三人を主人公にした長編小説です。
また、平家物語『蘇武』の章でも語られています。こちらで朗読しています。
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