代悲白頭翁 劉希夷~年年歳歳花相似 歳歳年年人不同(ねんねんさいさいはなあいにたり さいさいねんねんひとおなじからず)

こんにちは。左大臣光永です。しばらく暖かな陽気が
続きましたが、また雨が降ってくるようですね。
そんな時期ですが、いかがお過ごしでしょうか?

私はインターネット販売を専業でやるようになってから
あきらかに運動の量が減ったので、いかんなあと思いまして、
最近長い時間歩くようにしています。
今日は練馬区役所の展望台に登ってきました。

20階建てというのは、かなりの高さに感じられ、
くらくらしました…。

さて、本日は劉希夷(りゅうきい)の「白頭を悲しむ翁に代る」です。
このタイトルをきいてピンと来ない方でも、
「年年歳歳花相似 歳歳年年人不同」という文句をきけば、
「ああ、あれか」と来る、有名な詩です。


http://roudoku-data.sakura.ne.jp/mailvoice/nennensaisai.mp3

代悲白頭翁 劉希夷
洛陽城東桃李花
飛來飛去落誰家
洛陽女兒惜顏色
行逢落花長歎息
今年花落顏色改
明年花開復誰在
已見松柏摧爲薪
更聞桑田變成海

古人無復洛城東
今人還對落花風
年年歳歳花相似
歳歳年年人不同
寄言全盛紅顏子
應憐半死白頭翁
此翁白頭眞可憐
伊昔紅顏美少年

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白頭を悲しむ翁に代る 劉希夷

洛陽城東 桃李の花
飛び来たり飛び去たって誰が家にか落つ
洛陽の女兒(じょじ)顏色を惜しみ
行くゆく落花に逢いて長歎息(ちょうたんそく)す
今年(こんねん)花落ちて顏色改まり
明年(みょうねん)花開いて復(ま)た誰か在る
已(すで)に見る松柏(しょうはく1)の摧(くだ)かれて薪と爲(な)るを
更に聞く桑田(そうでん)の変じて海と成るを

古人また洛城の東に無く
今人(こんじん)還(ま)た対す落花の風
年年歳歳花相似たり
歳歳年年人同じからず
言(げん)を寄す全盛の紅顔子(こうがんし)
応(まさ)に憐れむべし半死の白頭翁
此翁(このおう)白頭(はくとう)真(まさ)に憐れむべし
伊(こ)れ昔 紅顔の美少年

公子王孫(こうしおうそん) 芳樹の下(もと)
清歌妙舞(せいかみょうぶ)す 落花の前
光禄(こうろく)の池台(ちだい)錦繍を開き
将軍の楼閣(ろうかく) 神仙(しんせん)を画く
一朝 病に臥して相識(そうしき)無く
三春の行楽 誰(た)が辺(ほと)りにか在(あ)る
宛転(えんてん)蛾眉(がび)能(よ)く幾時ぞ
須臾(しゅゆ)にして鶴髪(かくはつ)乱れて糸の如し
但(た)だ看(み)る古来(こらい)歌舞(かぶ)の地
惟(ただ)黄昏(こうこん)鳥雀(ちょうじゃく)の悲しむ有るのみ

現代語訳

洛陽の町の東では桃や李の花が舞い散り、
飛び来たり飛び来たって、誰の家に落ちるのだろう。
洛陽の娘たちはその容貌の衰えていくのを嘆き、
花びらがひらひらと落ちるのに出会うと長い溜息をつくのだ。

今年も花が散って娘たちの美しさは衰える。
来年花が開くころには誰が元気でいるだろう。

私はかつて見たのだ。松やコノテガシワの木が砕かれて薪とされるのを。
また聞いたのだ。桑畑の地が変わって海となったのを。

昔、洛陽の東の郊外で梅を見ていた人々の姿は今はもう無く、
それに代わって今の人たちが花を吹き散らす風に吹かれている。

来る年も来る年も、花は変わらぬ姿で咲くが、
年ごとに、それを見ている人間は、移り変わる。

お聞きなさい、今を盛りのお若い方々。

よぼよぼの白髪の老人の姿、実に憐れむべきものだ。
この老人の白髪頭、まったく憐れむべきものだ。

だがこの老人も昔はあなた方と同じく紅顔の美少年だったのだよ。

貴公子たちと共に花の咲く木のもと、
花の散る中、清らかな歌を歌い、見事な舞を舞ったりもした。

漢の光禄大夫王根が自分の庭の池に高楼を築き錦や縫い取りのある布を
幕としたように、

後漢の将軍梁冀(りょうき)が権勢を極め、
自宅の楼閣に神仙の絵を描かせたように、

そんな贅沢もしたものだが、

ある日病に臥してからというもの、友達は皆去って行った。
春の行楽は、誰のもとへ行ってしまったのだろう。

美しい眉を引いた娘もどれだけその美しさが続くだろう。
たちまち白髪頭となり、その髪が糸のように乱れるのだ。

見よ、昔から歌や舞でにぎわっていた遊興の地を。
今はただ黄昏時に小鳥が悲しげにさえずっているだけだ。

語句

■代悲白頭翁 「既存の楽府題「悲白頭翁」になぞらえて作った詩」、もしくは「「悲白頭翁」に代わって作った詩」の意味。ただし「悲白頭翁」という楽府第は伝わっていない。 ■城東 町の東側。 ■女兒 若い女。 ■惜顔色 風貌の美しさが失われることを惜しむ。 ■松柏 『古詩十九首』「古墓は犂かれて田と為り、松柏は摧(くだ)かれて薪と爲(な)る」をふまえる。「柏」はカシワとは異なり常緑樹「コノテガシワ」のこと。 ■桑田變成海 麻姑(まこ)という仙女が王方平という仙人に会った時、「この前会ってから東の海が三度桑畑に変わりました」と言った故事(故事集『神仙傳』)をふまえる。世の移り変わりの激しいことを言う。 ■寄言 聞きなさい。 ■紅顔子 若者。 ■伊 下のものを強調する語。これぞ。 ■公子王孫 貴公子たち。 ■芳樹 花の咲いている木。 ■清歌 清らかな歌。 ■妙舞 見事な舞。 ■光禄地台 漢の光禄大夫王根が贅沢を極め、庭の池に高楼を築かせたことによる。「光禄大夫」は皇帝の顧問官。 ■開錦繍 錦と縫い取りした布を幕として。「錦繍」は錦と縫い取りした布で、美しいものの喩え。 ■将軍楼閣書神仙 後漢の将軍梁冀(りょうき)が権勢を極め、自宅の楼閣に神仙の絵を描かせたと。 ■一朝 ある日。 ■相識 友人。 ■三春 陰暦の春。一月(孟春)・二月(仲春)・三月(季春)。 ■宛轉 眉が美しく曲がっている様子。 ■蛾眉 蛾の触角のような美しい眉。 ■須臾 たちまち。 ■鶴髪 白髪になる。 ■如糸 糸のように髪の毛が乱れるさま。 ■歌舞地 歌や舞でにぎわっていた遊興地。 ■鳥雀 小鳥。

解説

世の無常を歌った詩ですが、悲痛な感じよりも美しさが全面に出ています。「落花」「美少年」「清歌妙舞」「宛転たる蛾眉」…優美なイメージが次々と現れ、なんとも甘美な、美的な世界に包まれます。

ここで言う「花」は桃・李の花のことですが、日本人であれば桜の散る季節にこの詩を思い出すという方も多いでしょう。

登場する「翁」は青春には限りあることをたしなめているのですが、むしろその「限りある青春」の美しい描写にこそ心惹かれる詩です。青春への賛歌とも取れます。

対句が多く用いられていることも、美しいイメージを盛り上げることに一役買っています。

百人一首の二首を思い出さずにはいられません。

花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに

小野小町

花さそふ あらしの庭の 雪ならで
ふりゆくものは 我が身なりけり

入道前太政大臣

作者 劉 希夷

劉 希夷(りゅう きい、651年(永徽2年) - 679年(調露元年)?)。姓が劉、名が希夷、字が庭芝(廷芝)という説と、姓が劉、名が庭芝、字が希夷という二つの説があります。つまり、「劉希夷庭芝」と「劉庭芝希夷」のどちらか、定まっていません。

出身地も二説あり、汝州(河南省汝州市)か潁川(河南省許昌市)のいずれか、わかりません。25歳で進士に及第するも任官せずに各地を放浪しました。物にこだわらない性格で素行は悪かったといいます。酒と音楽を好み、琵琶を奏でました。

「代悲白頭翁」が最も有名で、この詩のあまりの出来のよさに叔父の宋之問が譲ってくれといったのを、劉は断りました。すると怒った叔父が下僕を遣わして劉を殺させたといいます。本当か嘘かわかりませんが、人の命が関係してくるほど、出来のいい詩ということです。

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朗読:左大臣