孟浩然に贈る 李白

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贈孟浩然 李白
吾愛孟夫子
風流天下聞
紅顏棄軒冕
白首臥松雲
醉月頻中聖
迷花不事君
高山安可仰
徒此揖清芬

孟浩然に贈る 李白
吾は愛す 孟夫子
風流 天下に聞こゆ
紅顏 軒冕を棄て
白首 松雲に臥す
月に醉うて頻りに聖に中り
花に迷いて君に事えず
高山 安んぞ仰ぐ可けんや
此より清芬に揖す

現代語訳

私は愛する。孟先生のお人柄を。
その風流っぷりは天下に聞こえている。

若い頃に俗世での立身出世に見切りをつけ、
白髪頭になった今は松の根方や雲の中で
寝転がる暮らしだ。

月を見て酔っ払っては「聖人に当った」と言いふらし、
花にうつつを抜かしては任官の話を断ってしまう。

なんという高い山だ。とても仰ぎ見ることはできない。
この場所から、先生の高潔なお人柄にお辞儀するのだ。

語句

■夫子 先輩や年長者を呼ぶ時の敬称。 ■紅顏 若者の頬が赤々と血色いい様子。 ■軒冕 身分の高い人がかぶる冠と乗る馬のことで、立身出世をあらわす。 ■白首 白髪頭。 ■松雲 松の根方や雲の中。 ■聖に中り 酒に酔うこと。魏の曹操が禁酒令を出した時に人々は隠語として清酒を聖人、濁酒を賢人といった事による。 ■君に事えず 孟浩然は自分を買っていた韓朝宗との面接を飲み会のためにすっぽかし、朝廷への推薦をダメにした。 ■清芬 清廉潔白な人柄。 ■揖す ゆうす。お辞儀する。

解説

先輩・孟浩然の生き様に、李白は強く惚れこんでいました。
李白はそこに理想の隠者像を見たのです。

孟浩然(689-740)。若い頃は各地を放浪し、
任官の口を求めるも叶わず、鹿門山に隠棲します。

その後も何度か任官を考えるも科挙に受からず、
出世とはほど遠い感じでした。

しかし詩人としての名声は高かったのです。
春暁」という名作を後世に残しています。
特に自然を描いた詩を得意としました。

同じく詩を志す李白・王維・張九齢らと交流を持ちました。

俗世に背き、詩の世界に生きる…
孟浩然の生き様は李白の心を打ちました。

李白はこの12歳年上の先輩のことを、
愛情いっぱいに歌っています。

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