「歳月人を待たず」(「雑詩」) 陶淵明

移居
昔欲居南村
非爲卜其宅
聞多素心人
樂與數晨夕
懷此頗有年
今日從茲役
弊廬何必廣
取足蔽牀席
鄰曲時時來
抗言談在昔
奇文共欣賞
疑義相與析

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居を移す
昔 南村に居らんと欲す
其の宅を卜せし為には非ず
素心の人多しと聞き
与に晨夕を数々せんことを楽えばなり
此れを懐って頗る年有り
今日 茲の役に従う
弊廬 何ぞ必ずしも広からん
取だ牀席を蔽へば足る
隣曲 時時に来たり
抗言 在昔を談る
奇文は共に欣賞し
疑義は相与に析く

現代語訳

昔、南村に住みたいと思っていたことがある。
方角を占って吉と出たとか、そんなことじゃない。

素朴な人が多いと聞いたからだ。
そういう人たちと朝夕を共にしたいと思ったのだ。

最初にそう考えてからずいぶん年月が流れたが、
今日、やっと引っ越すことができた。

雨風さえしのげればいいのだ。そう広い必要は無い。
寝台と椅子があれば、十分だ。

近所の友人が時々訪ねてきてくれる。
昔話に声を弾ませ、すぐれた文章があれば共に味わう。
疑問に思うことがあれば一緒に研究する。

解説

田園生活を楽しんでいた陶淵明でしたが、
44歳の時に家が火事で焼けます。
帰去来の辞」で描かれた、あの田園の家です。

思い描いていた理想の住まいが燃えてしまった…!!
どんなにかそれは、ショックだったでしょう。

しかし、淵明はいつまでもイジケてません。
南村に新しく住まいを得ます。

「ようやく安住の場所を得た」

…そんな、落ち着いた感じが、この詩からは伝わってきます。

帰去来の辞」「園田の居に帰る」もあわせて、聴いてみてください。

朗読:左大臣